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「君が代」不起立処分に最高裁判決――減給・停職は「裁量権の範囲」逸脱
2012年1月30日6:07PM
卒業式等の「君が代」斉唱時の不起立等を理由に、東京都教育委員会に懲戒処分された都の公立学校の教職員らが処分取消しなどを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は一月一六日、「減給以上の処分の選択には慎重な考慮が必要」とし、一部の処分を取り消す判決を出した。
都教委は一〇・二三通達発出(二〇〇三年)後の卒業式等で、校長に起立等の職務命令を出させ、不起立やピアノ不伴奏の教職員を「地方公務員法違反」で、「一回目は戒告、二・三回目は減給、四回目以降は停職」と、累積加重処分。
判決はまず、〇四年春までの都立学校の被処分者中、一六七人が処分取消しを求めた訴訟で、特別支援学校教諭だった渡辺厚子さんについて、通達前の入学式での服装問題等による戒告に、通達後の不起立を加重した減給処分を、「重きに失し社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え違法」と判じ、取消しを命じた。しかし、戒告については「学校の規律や秩序保持等の見地からその相当性が基礎付けられる」との理由で、取消しを認めなかった。
だが、弁護士出身の宮川光治裁判官は「職務命令は憲法第一九条違反の可能性がある。不起立行為等は教育上の信念に起因するもので、その動機は真摯であり、いわゆる非違行為とは次元を異にする」などの理由で「戒告も是認できない」という反対意見を付した。 また、行政官出身の櫻井龍子裁判官は「給与本体の減額に留まらず退職金・年金等にも影響する減給」や「教壇に立てず生徒への影響大の停職」を「機械的に加重するのは、法の許容する懲戒権を逸脱する」との補足意見を付した。
次に、〇六年に停職三カ月の処分を受けた根津公子さんと同一カ月とされた河原井純子さんは、「分断判決」。河原井さんについては「過去二年度の三回の不起立のみを理由に停職にした都教委の判断は違法」と判じ、損害賠償請求は高裁に差し戻した。一方、根津さんは「通達前、校長の国旗掲揚強行に対し、引き降ろしたこと」などが「妨害行為だ」との理由で、停職を是認し、上告を棄却した。
判決後の記者会見で、河原井さんは「『不起立三回で分限免職』という大阪の条例化を踏みとどめる力になれれば……」と語った。
(永野厚男・教育ライター、1月20日号)