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地震動による福島原発の破壊具合――国会事故調が独自の究明を始動
2012年2月9日4:50PM
東京電力福島第一原発事件で、津波の前の地震動によって原子炉がどの程度破壊されたかについて、国会が設置した事故調査委員会(国会事故調)が独自の原因究明に取り組む姿勢を明確にした。東京電力の社内事故調査委員会(委員長・山崎雅男代表取締役副社長)の中間報告(昨年一二月二日)や、政府の事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東京大学名誉教授)の中間報告(昨年一二月二六日)では、主要設備は地震時及び地震直後は安全機能を保持できる状況にあったなどとしており、その前提に立って政府や電気事業者は原発の安全対策を進めている。国会事故調の報告次第では新たな地震対策が必要になる。
国会事故調(委員長・黒川清元日本学術会議議長)は、法律によって設置され、強い調査権限を持っている。一月一六日に国会近くの憲政記念館で開かれた第二回委員会で本格的に始動した。事情聴取のために出席した政府事故調の畑村委員長は「事実を話してもらうため、個別の証言内容は非公開とし、また責任追及はしないことにした」と調査姿勢を強調し、中間報告までに行なった四五六人の聴取内容も明らかにしていない。これに対し、国会事故調の黒川委員長は「責任の所在を明らかにしつつ、真相究明を行なうことが重要だ」と強調している。
東京電力の中間報告の説明に対し、黒川委員長は、原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではなく、東電は除染に責任をもたないという〈無主物主張〉について質問。山崎副社長は「放射性物質が無主物との主張は弁護士の見解で、私は深く存じあげないので答えられない」と述べるにとどまった。また、福島第一原発の原子炉の設計にかかわった経験を持つ科学ジャーナリストの田中三彦委員は、地震動で重要機器が破損した可能性について聞いた。
経済産業省原子力安全・保安院が一月一八日、関西電力が大飯原子力発電所三、四号機(福井県おおい町)のストレステスト(耐性検査)の評価結果について妥当と判断する審査結果の素案を公表するなど原発再稼働への動きが強まっている。しかし、国権の最高機関である国会が設置した事故調がこれまでの中間報告に異議を唱えている以上、再稼働は無謀でしかない。
(伊田浩之・編集部、1月27日号)