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朝日労組の”提言”に真価が問われる新聞労連(その1)
2010年8月4日11:57AM
連合への”ロビー活動”を勧める!?
朝日新聞労組(今村建二委員長)が、日本新聞労働組合連合(豊秀一委員長、八六組合=新聞労連)に”改革”を提言し(以下、提言)、波紋を拡げている。ある新聞労連の関係者は「労連主流の考えと距離がありますし、詰問調の文章が反発を広げています。脱退をほのめかした”脅し”のようにも読めますからね」と話す。
たしかに提言は、〈構造的危機に、労連が十分に対応し切れているかというと、残念ながら懐疑的にならざるを得ない〉〈今回の改革提言こそ、しっかりと実行に移していただかなければ、朝日労組内での労連への批判は抑えがたいものになる。そういった危機感を背景に提言していることをご理解の上、いずれも実行に移していただけると期待したい〉と指摘している。
提言は三項目に分かれており、もっとも刺激的だったのは最初の項目だという。ここでは〈連合と産業政策を巡る意見交換の場を定期的に設け、新聞産業を守る有効な施策の実行を、労働界全体を巻き込む形で、世の中に訴えかける〉〈新聞労連自前のシンクタンクを立ち上げ、新聞産業を守る有効かつ具体的な施策の立案、提言をする〉としている。
一読して「新聞産業で働く仲間を守る」ではなく、〈新聞産業を守る〉という経営者的視点が気になる。理由部分の要約はこうだ。「消費税増税、再販見直し、特殊指定見直しの政策が実行されると、新聞産業を取り巻く環境は一気に悪化するので、政策決定過程に携わる者への働きかけが重要になる。主要各政党の幹部とメディア政策担当者、各種団体との意見交換、協議は欠かせない。中でも、民主党の政策決定過程に大きな影響を及ぼす連合とは、定期的かつ計画的に協議を重ねていく場を設けることが必要」(全文は『週刊金曜日』ホームページ掲載)。これは、”ロビー活動”の勧めではないか。
また、シンクタンクの必要性については要約、「新聞労連の取り組みでは新聞産業を守る抜本的提言のための分析、新聞産業の課題の検証、研究が出来ているとは言い難い。中堅・若手の研究者に一定の助成金を出し、本腰を入れて取り組んでもらった方が、より具体的な方向性が見出せるとともに、新聞産業を守る『応援団』の育成にもつながる」(同)としている。
上智大学新聞学科の田島泰彦教授はこう指摘する。
「新聞業界のいまの苦境は、権力との癒着や硬直化した記者クラブ制度、押し紙問題など新聞経営者側の要因で読者の信頼を失った面があり、調査報道の復権など組合の立場からジャーナリズムのあり方をどう考えるかが問われています。提言にはその視点がなく、企業を残すのが前提に読めます。厳しい言い方ですが、(連合など)権力への影響力を強め、分け前を確保する発想にもみえます。
民放労連が中心となったシンクタンク『メディア総研』は、私もメンバーですが、市民の立場にたったメディア、ジャーナリズムの研究とその普及を目指すのが目的で、目的のために放送のあり方に言及することはありますが、業界を守ることが目的ではありません」〈その2に続く〉
(伊田浩之・編集部)
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