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「生業を返せ、地域を返せ!」原発訴訟――東電と国を被告に訴訟提起へ

2013年3月1日5:19PM

「放射能と人間の共存はできない」と語る紺野さん(右)と、久保田美奈穂さん。(撮影/野中大樹)

 東京電力福島第一原発の事故で平穏に生活する権利を侵害されたとして、福島県の被災者らが国と東電を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こす。原告は福島、宮城、山形、栃木、茨城各県に住んでいた人で構成され、事故後に避難したか否かは問わない。原発事故から二年になる三月一一日に、東京、千葉、福島の各地裁に提訴する予定だ。訴訟名は「生業を返せ、地域を返せ!福島原発訴訟」(安田純治弁護団長)。

 二月八日には、原告や弁護団らが東京都内で会見した。

 浪江町で自動車の修理工を二五年間やっていた紺野重秋さんは「心の底では賠償金なんてものより福島を事故前に戻してもらいたい。生業が戻った町を返してもらいたい」と語った。紺野さんは昨年七月から福島市内で生活しているが、工場を借りるにも今の賠償金では賃借料を払えず、採算ベースにのせることができないという。

 茨城県に住んでいた久保田美奈穂さんは事故後、沖縄県に子ども二人を連れて避難した。夫は残った。八歳と二歳の子には血液や甲状腺被曝の検査を受けさせるため、たびたび病院を訪れる。時間が経つと数値も変わり、医療費もかさむが医者の説明も腑に落ちない。「わからない」という不安だけが募る。遠くに避難したことについて夫とその家族の理解を得られず、最近は「離婚」という現実的な問題が浮かび上がってきた。この日、「東電が起こした事故で、どうして普通に暮らしていた人が分断されなければならないんですか」と、心情を語った。

 事務局の馬奈木厳太郎弁護士は、「個別救済にとどまらず、全体の救済と、加害者の責任を問うていく」とし、個々の要望を制度化していくことを訴訟の究極的な目的にしていく方針を示した。

 福島原発事故で、国を被告に加える集団訴訟は全国で初めて。原告は一二日現在、五〇〇人。

(野中大樹・編集部、2月15日号)

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