渋谷区でホームレス排除――日弁連に人権救済申立
2013年4月11日5:09PM
「どこかに行って死んでくれ」。突然、罵声とともに寝場所を行政に奪われたホームレスのAさんは、今も恐怖に脅えている。昨年六月一一日の早朝のことだった。
今年三月二一日、日本弁護士連合会(日弁連)に「人権救済申立」を行なった当事者の一人だ。申立てを行なったのは東京・渋谷区内に居住するホームレス五人と支援ボランティア団体「のじれん」(渋谷・野宿者の生存と生活を勝ち取る自由連合)と「聖公会野宿者支援活動・渋谷」だ。申立てによると昨年六月一一日、渋谷区は予告なしに三カ所(区立美竹公園、区役所人工地盤下駐車場、区役所前公衆便所)同時に封鎖し、ホームレスを強制排除した。これを人権侵害だとして、救済を求めたものである。これまで話し合いによる現状回復を望んできた申立人たちに対して渋谷区が全く応じないため、区の行為は「憲法一三条(幸福追求権)、二二条一項(居住の権利)、二五条(生存権)を侵害した」ものと主張している。
「のじれん」の黒岩大助代表は「渋谷区はこれまでも都市再開発を理由に野宿者を排除してきた。三月のIOC評価委員会来日直前、都が代々木公園周辺に撤去警告を出した。行政による野宿者排除は今に始まったものではないが、われわれの支援活動の拠点まで奪うとはまさに前代未聞」と怒る。ホームレス排除の動きは渋谷区のみならず各地で起きている。
アベノミクスだ、オリンピック招致だと世は浮かれているが、ホームレスは減少せず、状況は厳しい。だが都の今年度の対策予算は、昨年度比一〇一六万九〇〇〇円減の七九万八〇〇〇円。「なぜか」と都に問うと、「対策が進み(ホームレスが)激減しているからです」との答え。聖公会の「渋谷区に聞きたい。人のいのちより大切なモノがあるのですか」と同様、全ての公権力、行政に問いたい。
(これひさかつこ・ジャーナリスト、3月29日号)