ベトナム原発の建設調査に国税二五億円――復興予算流用!使い道不透明
2013年11月11日5:31PM
福島第一原発事故後も、積極的に原発輸出を推進してきた安倍晋三首相。本格的な原発輸出が間近に控えているベトナムで、国税約二五億円を投入した原発建設の実施可能性調査が行なわれたが、その使い道や調査結果が不透明である実態が明らかになった。うち五億円は、復興予算が流用された。調査は日本原子力発電(株)(以下、日本原電)が実施した。
調査が行なわれているのはベトナム中南部のニントゥアン第二原発だ。省都ファンラン市から北東に二〇キロメートルのタイアン村に建設が予定されている。ここは国立公園に隣接するウミガメの産卵地。村人は、乾燥地に適した農業と漁業で生計をたてている。
同調査は、二〇〇九年に経済産業省の補助事業(「低炭素発電産業国際展開調査事業」)として日本原電一社が選定されたことに端を発する。調査費用は約二〇億円とされた。同社はベトナム電力公社(EVN)と一一年九月に契約を結び、調査を開始した。
その後、一一年一一月に「インフラ・システム輸出促進調査事業の一部調査」という名目で、調査費用は約二〇億円にプラスして、復興予算が五億円流用された。競争入札なしの随意契約だ。
当初の約二〇億円の調査項目は、エネルギー市場分析、電力系統分析、サイト調査および評価などであった。経産省は、「五億円も同様の調査項目」と説明する。
いったい最初の約二〇億円は、実際には何に使われたのか。なぜ新たに五億円もの資金が必要になったのか。市民団体からの再三の要求にもかかわらず、一〇月二九日現在、調査報告書は公開されていない。
【トルコでも国税一二億円】
日本原電はまた、原発輸出の候補とされているトルコでも建設予定地の地層調査を受注した。これは、一三年度「原子力海外建設人材育成委託事業」として経産省が新たに予算化したもの。一一億七〇〇〇万円が計上されている。六月に公募し、日本原電一社が応募し、採択された。
同社の敦賀原発二号機(福井県)については、その直下に活断層の存在が指摘され続けてきた。原子力安全・保安院(当時)の意見聴取会では、多くの委員が活断層の可能性が高いとした。委員の今泉俊文東北大学教授は「典型的な活断層」だとし、「よく審査を通ったなとあきれている」と批判した。
その後、原子力規制委員会も活断層の存在を認定したにもかかわらず、日本原電は自ら専門家を雇用して新たな調査を実施。「活断層はない」と規制委と争っている。
日本原電は、日本で唯一の原発専業事業者であり、敦賀原発二号機は活断層問題で廃炉の可能性も高まっている。電力各社が電気料金を値上げして日本原電を支えてはいるが、それがなければ同社の経営は破綻寸前の状態である。
経産省が行なった地層調査の資格審査基準は、「能力」「実績」「財政状況」が含まれているが、敦賀原発の活断層評価における同社の対応や財政状況はどのように審査されたのか。外部有識者による審査により採択されたというが、その名簿は公表されておらず、すべてが不透明である。
福島第一原発事故がいまだ収束しない中、日本は「原発輸出」どころではない状況だ。しかし安倍首相は今年一月には、最初の海外訪問先ベトナムで原発輸出の継続を確認。四~五月の中東訪問では、サウジアラビアとの原子力協定の締結交渉の開始、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコとの原子力協定締結に合意、インドとも原子力協定の交渉再開に合意した。
国内で汚染水問題が噴出した六月には、東欧でポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキアに原発を売り込むなど、精力的なトップセールスを繰り広げていた。
原発輸出は、相手国社会に、事故のリスク、被曝労働、処理不可能な放射性廃棄物とともに、巨大な原発利権に支配された、エネルギーの大量生産・大量消費の社会構造をもたらすことになるということは考慮されずじまいだ。
(満田夏花・FoE Japan理事、11月1日号)