テロの定義は自衛隊法のムチャクチャな拡大解釈――特定秘密保護法案の逐条解説で判明
2013年12月6日6:56PM
テロリズムに関する定義がムチャクチャで、この一点だけでも基本的人権を侵害する特定秘密保護法案で一二月六日、テロリズム定義の文面は自衛隊の警護出動に関する規定(自衛隊法第81条の2第1項)を参考としていることがわかった。だが、自衛隊の警護出動は自衛隊の施設や在日米軍施設などに限られており、場所を限定せずに市民活動の自由を脅かす法案のデタラメぶりが浮き彫りとなった。
福島みずほ参議院議員(社民)が入手した「特別秘密の保護に関する法律案【逐条解説】」(内閣官房)で明らかになった。
特定秘密保護法案のテロリズムの定義は次のようになっている。
〈政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう〉
それぞれの文章を「又は」でつないでいるため、条文上は「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」するだけで法案上はテロになってしまう。このため、テロの範囲が際限なく広がってしまうと批判が強い。
前出の逐条解説は次のように記述している。
〈本規定は、平成13年の米国同時多発テロを受けて創設された自衛隊の警護出動に関する規定を参考としている〉〈テロリズムは国際的な取組により撲滅することが必要な国際的な脅威であり、その活動場所の如何を問わず、テロリズムの存在は潜在的に我が国及び日本国民の安全を脅かす者である〉
一方、自衛隊法81条の2は次のようになっている。
〈内閣総理大臣は、本邦内にある次に掲げる施設又は施設及び区域において、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為が行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するため特別の必要があると認める場合には、当該施設又は施設及び区域の警護のため部隊等の出動を命ずることができる〉
つまり〈本邦内にある次に掲げる施設又は施設及び区域において〉と場所を限定し、かつ警護出動の条件として〈その被害を防止するため特別の必要があると認める場合〉に限ってあるのだ。その施設とは次の通りである。
〈一 自衛隊の施設
二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設及び区域(同協定第二十五条の合同委員会において自衛隊の部隊等が警護を行うこととされたものに限る。)〉
自衛隊の施設や在日米軍基地内で〈政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要〉する人に対し、〈被害を防止するため特別の必要があると認める〉なら、確かに警護出動は認められるかもしれないだろう。
しかし、特定秘密保護法案では、場所を特定してもいないし、被害防止の必要もなく、テロを定義しているから、ムチャクチャな拡大適用ができることになるのである。
(編集部 伊田浩之)