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被災地タクロバンで現地調査――福島からフィリピン支援を

2014年1月31日7:16PM

【上】パロ地区の漁港。水上の木造家屋は全壊し、遠くに避難所のコンベンションセンターが見える。

パロ地区の漁港。水上の木造家屋は全壊し、遠くに避難所のコンベンションセンターが見える。

【中】学校に支援物資を届けた菅野さん(左)とシスター・チャン先生。

学校に支援物資を届けた菅野さん(左)とシスター・チャン先生。

【下】泥にまみれた廃棄物の中から使えるものを探す人々。(写真/藍原寛子)

泥にまみれた廃棄物の中から使えるものを探す人々。(写真/藍原寛子)

 海岸沿いは見渡す限りの瓦礫の山だった。死者、行方不明者合わせて7200人以上。今世紀最悪規模とも言われる巨大台風ヨランダ(台風30号、昨年11月8日)が直撃したフィリピン・レイテ島タクロバンを訪れた。

 東日本大震災でフィリピンから受けた支援のお返しをしようと、募金活動を開始した福島県内のボランティア団体「シェア・ラブ・チャリティの会」(菅野良二代表)の現地調査が昨年末に行なわれ、私はそれに同行したのだ。

 高波が襲った漁港パロ地区。人々は東ビサヤ地方最大の屋内競技場タクロバン・コンベンションセンターに避難しているが、「物資も食料も水も家も、まだまだ不十分」と、案内してくれたステファン・カスティーリョさんが言う。

 410万人が家を失った。安心して住める家が今、何よりも必要だ。海外のNGOやセブ、マニラなどの支援団体はトタンやコンクリートを運び込み支援を始めたが、まだまだ追いついていない。

「政府や軍の支援が足りないんだ。この地域だけでも、幼い子どもたちが200人以上亡くなった。遺体は自分たちで埋葬しなければならず、浅い埋葬なので雨が降ると土が流れて遺体の一部が出てしまう。私の父も亡くなった。ちゃんと埋葬してやりたい」

 サンホアキンの区長パポス・ランタホさんの涙が止まらない。教会の前には、遺族による手作りの十字架が無数並ぶ。

「安否が確認できたのは幼稚園児から高校生まで753人の70%。あとは連絡がつかない。1月に学校を再開したいのですが……」。タクロバン市内中心部の私立学校の先生シスター・ローサ・チャンは、天井と壁が吹き飛ばされた校舎を見上げ、悲しみを浮かべた。

 菅野代表は今回、日本の子どもたちが学校で使っている鍵盤ハーモニカを持参、同校に2台寄付した。鍵盤ハーモニカは電気を使わず演奏できる。先生方は「大切に使います」と、鍵盤ハーモニカを両手で抱きかかえた。

 タクロバンで唯一治療を続ける東ビサヤ地区医療センターでは、電力も水も不足していた。気温30度でエアコンもない。被災地では13年末までに1万2000人が生まれるという多産国フィリピン。「小さな命を守りたい」。院長のアントニオ・パラディラさんが厳しい表情で訴えた。

 いくつか店の開いている市中心部の商店街。古着の店で掃除が始まり、泥だらけになった服が路上に放り投げられた。強烈な泥の匂いとハエ。そのごみの山に、「お宝発掘」とばかりに多くの人が群がった。泥の中から、水没を免れた生理用品を丁寧に掘り出した女性。ホッとした表情に、ピュアな笑顔が輝いたとき、私の頭に東日本大震災・原発事故と今なお闘う福島の人々の姿が浮かび、苦しく切ない思いが押し寄せた。

(藍原寛子、1月17日号)

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