靖国神社は「人間の尊厳を抹殺する侵略の象徴」――「安倍靖国参拝訴訟」始まる
2014年10月17日5:32PM
安倍晋三首相による靖国神社参拝は憲法の政教分離原則に反するとして、その違憲性などを訴える「安倍首相靖国参拝違憲訴訟」の第一回口頭弁論が9月22日、東京地裁で開かれた。
昨年12月26日の安倍首相靖国参拝の報に触れた北海道から沖縄までの日本人と在韓の韓国人ら273人が原告となり、今年4月に靖国神社への参拝の違憲確認、参拝の差し止め、慰謝料1万円の支払いを求めて提訴。国と首相に加え、参拝受け入れに積極的な役割を果たした靖国神社を被告に加えた。
原告らの主張は、(1)安倍首相の参拝で靖国神社が特別な存在としてみなされることによって他の宗教を信仰することへの圧力になる、(2)国民に戦争を受け入れさせるための精神的な準備行為になる、などの理由で信教の自由や平和的生存権などが侵害されたとするもの。
原告団を代表して意見陳述を行なった被爆者の関千枝子さん(ノンフィクションライター)は、動員作業中に原爆によって亡くなった級友たちが「準軍属」と認定され、後に「英霊」として祀られたことに言及。「原爆で無残な死をとげた年若い少年少女が、なぜ『戦の神』か」と疑問を投げかけた。また、「靖国神社は今も、あの戦争を聖戦とし(略)ています。戦前の軍国主義日本と全く同じ思想のこの神社に、私は、恐怖を覚えます」などと述べた。
同じく原告の金敏■(吉+吉)さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会執行委員長)は、「アジアの人々にとって靖国神社は、(略)2000万人以上の人を死に追い込み、強かんや拷問、殺戮、家族破壊、そして人間の尊厳を抹殺する侵略の象徴」とし、靖国神社参拝が日本だけの問題ではないことを訴えた。
今回、靖国神社が被告に加えられたことで、靖国神社が敗訴すれば自らの権利も侵害されると主張するグループ(表参照)が補助参加を申し立て、意見陳述の機会を求めた。申立人らの主張は、被告らが敗訴すれば、(1)申立人らの信教の自由が侵害される、(2)英霊祭祀が混乱する、(3)英霊を粗末にすることで戦争する覚悟がないとの心証を中国に与え、同国からの侵略を受けるので、申立人らの平和的生存権が侵害される、などというもの。
これに対し、原告らは、申立人に補助参加の利益はなく、申立て自体が裁判を受ける権利を濫用するものであると反論。裁判所も意見陳述の機会を与えなかった。
次回までに補助参加についての判断を裁判所が下す。次回は、12月1日15時半、東京地裁103号法廷で開かれる。
原告らは現在、二次訴訟を準備中。なお、同種訴訟は大阪地裁で先行して行なわれている。小泉純一郎首相(当時)の靖国参拝については、過去に福岡地裁、大阪高裁で違憲判決が出されている。
(大山勇一・安倍参拝違憲訴訟・東京弁護団、10月3日号)