『NOヘイト!』刊行に向けて都内集会――「出版の製造者責任」とは
2014年11月11日12:10PM
相次ぐ嫌韓嫌中本の出版への対抗方策を考えるイベント「『NOヘイト!』刊行前夜 出版の製造者責任を考える」が10月22日、東京都内で行なわれた。同名の新刊(出版社「ころから」)が今月末に発売されるため企画されたもの。
第一部では加藤直樹氏(『九月、東京の路上で』著者)、岩下結氏(「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」事務局)が登壇。第二部では、この間ヘイトスピーチ関連本の出版に関わった明戸隆浩氏(『ヘイトスピーチ』訳者)、神原元弁護士(『NOヘイト!』共著者)、朴順梨氏(『奥さまは愛国』著者)も加わり、各立場から報告を行なった。
神原氏は憲法学者・芦部信喜氏の著作を引用し、「〈表現の自由〉とは本来、正しい情報を国民が受け取る権利のこと。ジェノサイドや差別を防ぎ民主主義の防波堤になるが、ヘイト本はそれをぶち壊している」と問題提起した。
明戸氏は法規制をめぐる議論について、「どうしても〈規制〉か〈表現の自由〉という二択になりがち」だが、そもそも「他国だと差別行為にあたることも日本だとほぼ野放し」「まず人種差別禁止法の制定を考える必要がある」と指摘。
朴氏はこれまでの取材経験を踏まえ、「ヘイトスピーチの記事を書くと必ず抗議がくる。与えられた場所でしか書けないなか、心が折れてしまうライターもたくさんいるのでは」と、書き手側を取り巻く環境を率直に語った。
当日の参加者には日頃から路上での抗議活動に携わる人々も多く、会場は満席。内容が「真面目」で売れないとされる「反ヘイト」本の売り方や、あるいは本や記事に対する嫌がらせへの対抗策など、積極的な意見や質問が交わされた。
今後は書名(『NOヘイト!』)の文字広告を神保町(東京)に掲示するためのクラウド・ファンディング(インターネットを利用した資金提供)も募る予定という。
(松岡瑛理・ライター兼社会学研究者、10月31日号)