福島の子ども、「甲状腺がん/がんの疑い」が新たに4人――健康調査そのものにも課題
2015年1月30日12:15PM
東日本大震災発生時の2011年3月に0歳から18歳だった福島県民を対象とする甲状腺検査で、昨年10月までの先行検査(1巡目)で「異常なし」とされた4人が、その後の本格検査(2巡目、継続中)で新たに「甲状腺がん/がんの疑い」と診断されたことが昨年12月25日、「県民健康調査」検討委員会(星北斗座長)で報告された。伊達・田村・福島の3市と大熊町から一人ずつ、1巡目の結果と合計して112人になる。
検査・診断に当たった鈴木眞一教授(福島県立医科大学)は、「(1巡目の検査で)見落としはなかったことは画像で確認した。引き続き慎重に調べる」と述べた。となると、前回の検査から短期間に発症した疑いがある。同検討会や鈴木教授らが「甲状腺がんの進行は遅い」としてきた説明も揺らぐ。星座長は「断定的には言えないが、放射線の影響は考えにくい」と前回と同様の回答を繰り返した。
健康調査そのものにも課題が残る。甲状腺嚢胞・結節・腫瘍のみに特化し、機能亢進症や機能低下症などの機能障害の患者が統計に上がってこない。世界の被ばく地で放射能の影響とされる白血病や悪性リンパ腫などについても同様で、全身症状を調べ、予防や早期発見・治療につなげる医療政策が欠落している。結果的に県民が検査の利益を実感できない“アリバイ検査”になる危険性を孕む。
県民205万人を対象にした「基本調査」(行動範囲や飲食物などで被ばく推計を弾き出す調査)の回答率は、震災後の行政不信もあいまって、26・9%と3割に満たない(14年10月31日現在)。
そこで事務局は、回答済みの調査票に、県民全体の線量分布の「代表性」があるかどうかを新たに調べるという“奇策”を打ち出した。これが将来、全県民の健康状態の把握をしない理由になるならば、調査の意義を根幹から否定するような愚策ではないか。
(藍原寛子・ジャーナリスト、1月16日号)