許可区域外の珊瑚礁をブロックで潰し、砕く――沖縄防衛局“二重基準”も露呈
2015年3月16日5:53PM
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴い名護市辺野古では新基地建設が進むが、現場の内外で日本政府は「法治国家」にほど遠い姿勢を露わにしている。
翁長雄志知事は2月16日、コンクリートブロックを海底に設置する作業の「停止指示」に踏み切った。県が許可した区域外にブロックが落とされ、珊瑚礁を損傷した可能性があるからだ。
県が沖縄防衛局に送付した文書によると、指示は水産資源保護法に基づく沖縄県漁業調整規則に沿った措置で、沖縄防衛局がこれに従わない場合、県は「(岩礁破砕手続きの)取り消しも視野にある」としている。
しかし、菅義偉官房長官をはじめ政府関係者は、仲井眞弘多前知事による辺野古の埋め立て承認(13年12月)を盾とし、作業の正当性を強調する。防衛省もコンクリートブロックの設置は「県から『手続きの対象とならない』旨示された」とし、許可を得ているとの考えを示した。さらに作業の停止指示を受け、防衛省はブロックの図面を「証拠」として提出した。この図面を事前に県の担当者へメールで送っていたという。
だが、県はこれらについて、区域外の珊瑚礁を損傷することは「(岩礁破砕許可の)申請の際に聞いていない」と反論する。また、メールで送ったとされる「証拠」についても「図面では重量など詳細がわからない」として、正面から対立する構えを見せている。
漁業調整規則に基づく岩礁破砕の取り扱い方針によると、トンブロック(数十トン規模のコンクリートブロック)と同等の重量がある消波ブロックは、設置に「許可が必要な行為」と定められている。
翁長知事の停止指示を受け、沖縄防衛局はコンクリートブロックの設置作業を停止した。だがその反面で、県への非協力的な姿勢は以前に増して強まっている。
停止指示の中で県は、区域外の珊瑚礁の損傷を調査する意向を示し、沖縄防衛局に協力を仰いだ。具体的には、米軍提供区域内への立ち入りに関する許可申請の斡旋を依頼している。ところが防衛省は「立ち入り申請の斡旋義務はない」として、県の依頼に応えていない。1996年の日米合同委員会合意では、自治体の米軍施設・区域内への立ち入りは自治体が米軍に申請し、交渉する規定となっている。防衛省はこの合意をもとに「斡旋義務はない」と突き返すが、一方で、キャンプ・シュワブ内の文化財など、辺野古での新基地建設に係る調査については、これまでも名護市教育委員会の立ち入りを斡旋するなど、米軍との仲介役を果たしてきた。
工事に必要な手続きは協力し、そうでない調査は協力しないという二重基準が浮かび上がる。こうした非協力的な政府の姿勢がさらに反発を生んだ面もある。2月24日、翁長知事は「(岩礁破砕許可を)取り消す可能性大だ」と発言した。県庁内では政府の対応を「誠意がない」と批判する声が相次いでいる。翁長知事の言及は許可取り消しの決断に向けた最後通告とも受け取れる。
【県は独自の調査で
珊瑚礁の損傷を確認】
沖縄防衛局とのやりとりに見切りをつけた県は2月26日、米軍提供区域外での調査を実施した。県水産課によると、区域外でコンクリートブロックが珊瑚礁を損傷している様子が確認されたという。
政府は県の調査を「一方的な調査で遺憾」(中谷元・防衛相)と批判し、菅官房長官も「国の安全保障や公共事業は、いったん申請が受け入れられると、粛々と進めていく。そういう判例も出ている」などと「判例」を持ち出して県を牽制する。
新基地建設に反対する沖縄県と、強権的行為で建設を推進する政府との対立はますます先鋭化している。とはいえ、自治体の意見や懸念を軽視し続ける政府がある一方で、法律に従い措置を執る沖縄県のどちらが道理にかなっているのか。ここまでくれば、もはや明白ではないか。
(池田哲平・『琉球新報』記者、3月6日号)