日本兵の撮った日中戦争の現場――加害の歴史映し出し
2015年6月5日12:54PM
南京大虐殺や従軍「慰安婦」……否定しようのない侵略と加害の事実をとらえた写真の数々に多くの来場者が見入っていた。旧日本軍の一兵士として1937年7月に召集され、2年半にわたり中国大陸を転戦、約3000枚の写真を撮影した村瀬守保(1988年没)の写真展「一日本兵が撮った日中戦争」が5月8日から10日まで、東京・中野の「なかのZERO」展示ギャラリーで開かれた。今後、全国各地で開催されていく。
村瀬の写真は写真集『私の従軍中国戦線』(日本機関紙出版センター刊)として出版されているが、多くの人の目に触れる形で公開展示される機会はなかった。ご遺族から寄贈された写真を保管している日中友好協会が「戦後70年企画」(保里十志男実行委員長)として開催。同協会では昨年、村瀬自身の写真説明文のある50点を拡大し展示用パネルとし、撮影時期や場所などが特定されていないものも含めて約500点を盛り込んだパネルを作成。その全パネルが展示されるのは今回が初めて。
「首都南京へ突入」「おびただしい死体」「第一線の兵士たち 試し斬り」「捕虜の使役」「軍直営の『慰安所』」などの題名のついた展示パネルは盧溝橋事件、南京大虐殺、満州開拓青年義勇軍など中国侵略の歴史的な現場をとらえた貴重な記録となっている。
同協会の矢崎光晴事務局長は「戦争が身近に感じられる政治状況下、ぜひ多くの方々に観ていただき、“平和や日本人を守る”などと偽って始められる戦争の本質を感じ取ってほしい」と話す。会場では元日本兵が自らの加害体験を証言したDVDも上映、幅広い年代の人たちが食い入るようにして視聴していた。同展は7月18日から8月下旬にかけて東京、埼玉、山口、京都、鳥取、群馬、福岡、神奈川の各都県で開催予定。入場無料。詳しくは日中友好協会(TEL 03・3234・4700)へ。
(片岡伸行・編集部、5月22日号)