証人を怒鳴りつけた検事が弁護士に転身
2010年11月29日2:30PM
横浜地裁から「検察官として、あるまじき行ない」と批判された横浜地検の検事が三月末に辞職し、約一カ月後の五月六日に弁護士登録していたことがわかった。関係者によると元検事は、知人が詐欺で得た現金を自宅に隠したとして組織犯罪処罰法違反に問われた被告の捜査を担当。昨年一二月の公判中、証人待合室で証人男性に対し電話に出ないことを理由に怒鳴りつけたという。男性は被告の共犯と疑われ、一月に起訴猶予となったが、公判では嫌疑を否定。被告の有罪・無罪にも関わる証人だった。
九月の判決公判で横浜地裁は、無罪を主張した被告を懲役一年六月・執行猶予三年とする一方、元検事が待機中の証人を怒鳴りつけたと指摘、冒頭のように批判した。だが、日弁連や元検事の所属弁護士会、最高検、法務省にも元検事の言動は報告されていないという。
横浜地検は取材に対し、判決で指摘された元検事の言動を事実と認めつつ、「証人威迫等を企図したものではなかったと承知している」「口頭で厳重に指導するとともに、速やかに関連事件の捜査の担当を別の検察官に変更するなどの対応を講じたものである」などと説明。上級庁や日弁連に報告していないことについては、「判決で指摘された当該検察官の言動には適切さを欠く点はあったものの、証人威迫等には該当せず、上級庁等に報告を要する事由が認められないことから、上記対応を講じた時点で上級庁等に報告しなかったものである」と回答した。
一方、元検事こと高橋壮志弁護士は、横浜地検も認めた怒鳴りつけ行為を「事実ではない」とし、「呼び出すために話しかけたというのが事実。被疑者を呼び出すのも検事の仕事」と説明。さらに「辞職はこの件と一切関係ない」と強調した。
横浜地検は改めて事実確認の上、裁判所に「あるまじき行ない」と批判された高橋元検事の言動の真相を公表すべきだろう。
( 片岡健・ルポライター)