7%の未買収地収用に向け、八ッ場ダム公聴会――有害スラグは放置のまま
2015年7月24日12:47PM
八ッ場ダム事業用地の7%にあたる未買収地に土地収用法を適用するか否かを判断する公聴会が、判断者となる国土交通省土地収用管理室の主催で6月26、27日に群馬県内で開催された。
公募した22人の公述人のうち、反対地権者の土地を奪うほどの公益性はないとの立場で14人が公述。治水や利水の目的は消滅していると訴えた下流都県住民の他、現地の長野原町で町議を務める牧山明さんが反対地権者の高山彰さんを伴って公述を行なった。高山さんは「今日は生前葬のような気持ちで来た」と故郷を奪われる気持ちを表現した。「浅間山が山体崩壊した層は貯水によって地すべりが起きる可能性がある」との地質学者の指摘や、事業用地に大同特殊鋼の有害スラグ(鉱滓)が撤去されず放置されている問題を指摘した市民オンブズマン群馬の小川賢さんなど専門的な立場からの指摘も相次いだ。
「早期完成」など賛意を公述した8人のうち1人はダム事業を進める国土交通省、2人は埼玉県副知事と加須市副市長、1人は埼玉県の元水資源課長であったことが公述中に判明、3人は長野原町町議の現職と元職、1人は東京都から江戸川区への天下りを経由して公益財団法人へ「渡り」中の土木官僚だった。「ヤラセではないか」との声が会場からはあがった。
現地では本体工事がすでに始まっており、公聴会自体が通過儀礼と化している。
公述で指摘された鉄鋼スラグについては、昨年11月に国、県、渋川市によって「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が設置され、現在も調査が続く。国の事業では3800工事から抽出した92工事中56工事で鉄鋼スラグの出荷記録や類似する材料の混入が判明している。ゴミとして処理すべきスラグを逆有償(大同特殊鋼側が手数料付きで出荷)で公共事業に使った事件だが、群馬県はいまだに業者を廃棄物処理法違反で告発していない。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、7月10日号)