自衛隊配備に揺れる宮古島で――ヒゲの隊長“こっそり”講演
2015年11月11日12:48PM
「平日の午後2時半開始ですよ。直前で知った人は仕事も休めない。これが防衛省や政府のいう丁寧な説明か」――沖縄の宮古島市に住む住民はこう憤る。陸上自衛隊配備計画の渦中にある同市内で10月22日、“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参院議員(自民)が講師の「平和安全法制セミナー」が開かれた。200人弱の参加(主催者発表)の多くは自衛隊関係者だ。自民党沖縄4区主催で、「宮古地区自衛隊協力会や父兄会、隊友会が自主的に市民参加を呼びかけた。こちらから不特定多数への呼びかけはしていない」(主催者)と言う。冒頭の住民は続ける。「佐藤議員のように防衛面で関係の深い与党議員はなかなか来ません。全住民に余裕をもって告知しなかったのは批判をおそれたのか」。
参加した市民グループ(「琉球弧の軍事基地化に反対するネットワーク」)の運営サイトによると、配布された資料は〈自民党の「平和安全法制」という、“あかりちゃん”の出てくる簡単な説明チラシと列島線の入った日本戦略研究フォーラム作成の地図、南シナ海と東シナ海の中国の活動状況を示す地図、佐藤正久後援会リーフレット〉だった。資料中の(一社)日本戦略研究フォーラム(平林博代表理事・会長)は“保守系”政治家や言論人が多数所属するロビー団体だ。
会場から配備と「有事」避難計画の関係を問われた佐藤議員は、「総務省系統で国民保護計画(中略)各県や自治体が作る」「宮古島から約5万人を避難させるというのは生半可じゃない」「空港と港(中略)自衛隊が来るとそういうインフラっていう部分も整備しやすくなります」と曖昧な回答をした。
『防衛白書』(2015年版)に「自衛隊は、武力攻撃事態においては、主たる任務である武力攻撃の排除を全力で実施」とあり住民の避難や救難は「これに支障のない範囲で」のみ携わるとある。部隊が配備されても何ら安全の保障はない。
(内原英聡・編集部、10月30日号)