第20回「週刊金曜日ルポルタージュ大賞」審査員特別賞入選作
2009年12月11日9:30AM|カテゴリー:書庫|admin
マハラバの息吹―もうひとつの1960年代―
藤井孝良
コンクリートの岸辺に打ち上げられた魚。
舞台の上の「彼ら」の肉体は演技としての動きを超えた生々しさがあった。どんな名役者であったとしても「彼ら」を超えることはおろか、その演技を真似することすらもおそらくできないだろう。なぜならば、「彼ら」は今こうして「」を付される存在だからだ。
『平成18年身体障害児・者実態調査結果』等によれば、日本における障害者の延べ人数は、724万人。これは現在の埼玉県の人口を上回る。しかし舞台上の「彼ら」はこの724万人の中で、いや埼玉県民の誰よりも強烈な存在を私たちに印象づける。
連休最後の日曜日、私はJR土浦駅前にある茨城県南生涯学習センターの大ホールにいた。脳性マヒ、ポリオなどの重度障害者9名によって構成される演劇集団、「劇団態変」の公演がある。「マハラバ伝説」と題されたその劇の存在を知ったのは2009年4月24日の『茨城新聞』朝刊の「伝説の”障害者解放区”描く」という見出しの小さな囲み記事だった。