第21回「週刊金曜日ルポルタージュ大賞」選外期待賞入選作
2011年2月4日4:15PM|カテゴリー:書庫|admin
在日米軍基地移転の中のグアム
篠崎正人
はじめに
沖縄で起きた少女暴行事件に対する沖縄県民の怒りが高揚し、基地負担の軽減を求める世論が高まった1996年頃、西太平洋に浮かぶマリアナ諸島のグアムから「沖縄の米軍基地を受け入れてもいい」という意思伝える州知事などの発言が相次いだ。その後、沖縄県宜野湾市の海兵隊普天間基地を名護市辺野古地区に移設する計画が行き詰った今日、長崎県内の大村市や佐世保市、佐賀空港、徳之島など九州各地への移設が話題になる一方、沖縄に駐留する第3海兵師団の一部をグアムに移駐させることが日米で合意された。
しかし、沖縄に駐留する海兵隊の一部をグアムに移転させることが沖縄の負担軽減にとって解決策なのか、今年3月6日から9日まで、原水禁九州ブロックのグアム調査団に同行して取材した。
南海の楽園の今
グアムは、沖縄の3分の2にも満たない南北に最長45キロ、東西に最大10キロ、人口17万人弱の小さな島である。グアムは16世紀、大航海時代のスペインによる占領から1899年の米西戦争による米国統治、アジア太平洋戦争時の日本の占領、そして再び米国の信託統治を経て現在は米国の準州(自治領)となり今日に至っている。ベトナム戦争当時はB52爆撃機などの出撃拠点として、また1980年代の東西冷戦が激化したときは西太平洋における海軍と空軍の補給・支援拠点として全土の3分の1を米軍基地が占めるほどの「基地の島」であった。
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