『日本会議の研究』の著者・菅野完氏が、2013年に自身が関わる市民運動へのカンパ金のほぼすべてを着服し、運動をパージされていたことが明らかになった。(本誌取材班)
本誌は昨年12月27日付でホームページの「おしらせブログ」に〈性的「暴行」事件を起こした『日本会議の研究』の著者・菅野完氏をめぐる「運動体」の対応〉(http://www.kinyobi.co.jp/news/?p=3692)と題する記事を掲載した。同記事では、菅野氏が当時所属していた差別・排外主義に抗する「しばき隊」を抜けるに至った背景には、〈反レイシズムの広報活動のために集められ、「差別撤廃 東京大行進」のデモの制作費に充てるよう考えられていたカンパ金の一部を着服し、使い込んでいたことが発覚したためという〉とし、〈菅野氏は界隈の運動に関わらないとの旨の誓約書を書き、運動からパージされた〉との経緯を複数の関係者の証言として載せた。
口座管理人の立場で着服
すると記事を発表した同日夜、かつて存在した反人種差別運動団体「People’s Front Of Anti-Racism」(以下『PFAR』、14年9月30日活動終了)の運営メンバーであった木野寿紀氏がネット上に、カンパ金着服に関する事実を公表した(リンクはここから)。これによると、PFARによる「反レイシズム・メッセージ・プロジェクト」(人種差別団体のデモ行進に対して、新大久保駅近くの大型街頭ビジョンで反レイシズムのメッセージを放映するなど)のために寄せられたカンパ金106万7601円のうち、90万470円(口座からの出金手数料を含む)を菅野氏は着服。同団体の銀行口座の管理人であるという立場を利用し、13年5月7日から9月9日までに同額を出金した。10月初頭にPFAR内で着服の事実が発覚したが、菅野氏に確認を求めようとしても連絡が取れなかったという。11月3日になって、菅野氏から着服した全額が同口座に返還された。
返還されたカンパ金はその後、「国際人種差別撤廃デー記念デモとシンポジウム(14年 3月21日)」「東京レインボープライドパレード(同年4月27日)への参加」「東京大行進2014(同年11月2日)の開催費用の一部」に使用されたという。木野氏は、〈PFARの口座へお寄せいただいた募金全額が正しく本来の使途に使われたことは間違いない〉と強調している。
保守速報が削除
一方、昨年12月27日付の本誌記事は、まとめサイト「保守速報」に〈しばき隊が『差別撤廃 東京大行進』デモのカンパ金の一部を着服し、使い込んでいたことが発覚〉とのタイトルで記事の一部が拡散された。しかし、着服したのは菅野氏であることや記事の引用の範囲を超えていることから、今年1月30日に本誌は保守速報に抗議。すると同日中に保守速報から謝罪とともに該当記事を削除したとの連絡があった。
コメントの「捏造」という嘘
当の菅野氏は自身のツイッター(@noiehoie)で1月28日、〈週刊金曜日の報道そのものが、僕のコメントを改変しとるしね。それも「僕が一切言ってないことを書いた」レベルでね〉(https://twitter.com/noiehoie/status/825157681853837313)とつぶやきをしている。29日にはコメントを「捏造」した(https://twitter.com/noiehoie/status/825494834693574656)とも発言した。
だが、菅野氏のコメントはすべて本人のコメントであり、菅野氏自身または菅野氏の弁護士に発言内容の確認も取った上で掲載したものである。同氏は12年初夏に性的「暴行」事件を起こし、自身が事件を「事実」と認める謝罪文も書いている。しかし被害者は、「謝罪は形式的なものでしかなく、とても反省しているとは思えない事件後の菅野氏の対応や、ツイッターなどでの発言によってPTSDが悪化し、心療内科への通院を余儀なくされている」として15年に民事訴訟を提起。現在も係争中だ。さらに、昨年6月に被害届を受理した警察の捜査も現在並行して続いているのだ。