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金曜日ちゃんねる 「セブン-イレブンだけじゃない!? 本当は怖いフランチャイズ商法」

フランチャイズ商法とは?

編集長
『週刊金曜日』編集長今週号は「フランチャイズ商法の怖い話」ということでフランチャイズという問題を扱っております。その特集のデスクというかですね、編集をしました編集部の片岡を呼んでおります。片岡さんはセブン-イレブンを、この間ずっと担当していますが、「23兆円業界!! この業界には規制法が必要だ」という特集ですね、頭のところは。この規制法って言うのはフランチャイズ法ということですね。このフランチャイズ法っていうのは日本にはないんですか?

片岡
日本にはないんですね。フランチャイズができて半世紀ですが。

編集長
フランチャイズっていうのはそもそもどのような業態のことを言うんでしょうか?

片岡
一つのパッケージされたビジネス。統一ブランドで同じ商品を全国のどこの場所でも同じ値段で買えると、そのための宣伝は中央でやる。仕入も中央に任せろ、あとは同じモデルで売ってくれるだけで商売が成り立つ、というのがフランチャイズの言わば宣伝文句ですね。あるいはシステムもそうです。

編集長
そのフランチャイズというのが、表紙(11月28日号)でもマクドナルドとかTSUTAYAだとかドラッグストアチェーンとかありますけども、これは要するにそれぞれ本部が100%経営している訳ではなくて、地元の人で自分がやりたいという人が、一部経営権を委ねられてやっていると、いうかたちなんですか?

片岡
二種類ありまして、本部が直営している直営店。今言ったような地元の人が契約して一定の資金を出してもらって、フランチャイズ契約、それぞれ独立した業者、自営業として契約をするフランチャイズ店の二種類あるんです。で、コンビニがフランチャイズの旗手ですけれども、外食店、電器店、ドラッグストア、それぞれ直営とフランチャイズの比率は違うんです、違うんですが、基本的にはその二種類で成り立っているということです。

編集長
コンビニはセブン-イレブンとか(週刊金曜日では)長くやっていますけれども、コンビニオーナーという言葉がありますが、このマクドナルドとかもオーナーがいるということですか?

片岡
そうです。マクドナルドも今フランチャイズの比率を高めようとしています。しかし、この間の業績悪化で今問題になっていますね。それで都内のあるオーナーは5店舗か6店舗持っていたオーナーがいまして、ところがそのオーナーが「もう辞めた、フランチャイズ契約しない」という動きがでていますね。そのほか、これまでずっと半世紀フランチャイズは伸びに伸びてきたわけですが、ここに来て大きな曲がり角にきているという状況です。それは業績的にもそうですし、フランチャイズ商法そのものが働き手にとって果たして幸せなのか? というところで深刻な問題をさまざまに生んでいる、という状況なんです。

フランチャイズ商法の問題点と行政

編集長
表紙(11月28日号)は「フランチャイズ証法の怖い話」という風にうってますけど、もちろんメリットもあるでしょうけども、この「怖い話」の部分ですよね、フランチャイズ商法はどういう問題が?

片岡
基本的に独立した経営者としてフランチャイズのオーナーと本部という関係があるんですけども、まあ、契約上はそうなっています、題目はそうなっているけども、基本的に、ほとんど利益を本部に吸い上げられて、働き手はまさに24時間働きっぱなし、もちろん(オーナーが)従業員を雇うわけですけれども、働いても働いてもなかなか利潤が自分(オーナー)のところには入ってこないという状況が一つ。本来それは24時間残業をさせれば残業代が発生するわけです。従業員であれば。しかし、契約上独立した事業者ということになるので、残業代を払わない,社会保険も必要ない、そうした本来経営上のリスクを負うべき本部が、リスクを負わない仕組み、簡単に言うとこれがフランチャイズの大きな問題点、それによる訴訟が多発している、という状況なんです。

編集長
セブン-イレブンなど(コンビニ)については、訴訟を『週刊金曜日』でもたびたび報じてきているんですけども、それ以外のフランチャイズについても訴訟が起きているということですか?

片岡
そうです。コンビニだけじゃなくて、やはりフランチャイズをめぐるさまざまな訴訟っていうのはこの間増えているんです。ただ、そのデータをどこも、つまり経済産業省でもフランチャイズ協会という業界団体がありますけども、ここに取材をしてもですね、だれもその実態を把握していないという状況でして、労働あるいは損害賠償に関わっている弁護士への取材の中から増えているいう状況が
わかるという状況なんですね。その意味でも業界規制法が必要だという指摘をしています。

編集長
『週刊金曜日』ではそもそもフランチャイズと言えばセブン-イレブンとかコンビニエンスストアを中心にやってきたんですけども、次第に取材を重ねていくうちにフランチャイズ商法がそもそも、今言われたように問題点があると、いう風な話になっていったと思うんですが、これを問題視しているというのは弁護士の方もいましたけれども、ほかに日弁連、日本弁護士連合会もですね、「経済産業省が立ち上げた『コンビニ研究会』の茶番」(11月28日号23ページ)とありますけども、行政などはどのように捉えているんでしょうか?

片岡
行政も問題だということは分かっていて、さまざまな資料、まさにこの『週刊金曜日』で連載しているセブン-イレブンの連載などはじめさまざまな資料を集めてはいて、問題だということは分かっているんです。分かってはいても、経済産業省としてはいまのところ法律は必要ないという立場を明確にしています。一方で日弁連は「消費者問題対策委員会」ですでにこのフランチャイズ規制法の素案を発表しているわけです。ここでやはり業界は、基本的にはそういう法律は必要ないという立場ですし、一方でさまざまな訴訟がおきるなかで、日弁連は必要だと。で、経済産業省はその中間にいて本来その全体像を見渡して半世紀にわたる業界の現状をみて、一定のルールが必要だろう、という方向に傾いてもいいはず、ところが公取委(公正取引委員会)以外はこの問題をきちんと、法的にあるいは社会的に是正していこう、という動きがない、というのが現状で、経産省の業界言いなりの官業癒着の、この省の体質が本当に垣間見える問題なんですね。

編集長
「研究会の茶番」とありますけれども確かに入っているメンバー見ますとですね、各コンビニエンスストアの代表、あと『読売新聞』などのマスコミもちょっといますよね。ただ、これ『読売』と『日経』ですしね、これ学者の方たちいますけれども、「御用学者」と言ってしまうとアレですけれども、実際のところはどうなんですか?

片岡
誌面(11月28日号)にも書いてありますが、法学部とかメディア研究とか商学部とか書いてありますが、たとえば独占禁止法の問題だとか、消費者問題の専門家が誰一人としていないわけです。加えてコンビニの、これ地域貢献というテーマでやってる研究会なんですが、地域に貢献するには全国各地の約5万店のコンビニのオーナーがいるわけですけれども、そのオーナーの声を聞かずしてなぜ地域貢献を語れるのか、この人たちが。この構成はですね、現在安倍政権のいくつかの諮問会議があります。そのメンバーの構成と大差ないんです。 結局は安倍政権の新自由主義的なと言おうか、言論無視だと言おうか、労働側無視だと言おうか、その人たちの人選だと、という風に思えてなりません。

編集長
まあ、新自由主義という言葉もですね、一見自由主義ですけれども、経済上の自由主義、しかも、さらに言えば企業にとっての自由という話であって、労働者にとっての自由というのは二の次、三の次ですからね。

片岡
まさにそうです。フランチャイズ(franchise)って英語ですけれども、もともと語源はフランス語で編集部の成澤さんにきいたところ、フランシーハ(franchir)と発音するそうなんですが、これは「自由民になる」とか、あるいは「解放する」「解放させる」というのが本来の意味なんです。今日本において進行しているフランチャイズというのは、まったくこの語源の反対、「従属させる」「隷属させる」とうのが実態なんですね。ですから、まあブラックジョークのような言葉の語源と現在のフランチャイズの実態というところ、それがさまざまな問題を生んでいると思います。

編集長
本当にその、サラリーマンをやっているとか、いろんな形で自由になりたいからということで、社長になれば一定の自由が得られるだろうと、ということでオーナーになられる方も多いと思うんですけども、その結果単に見せかけだけで、名ばかりオーナーで仕入からなにから本部のいいなりになってしまって逆らえない状況、この実態というかこの認識のギャップというのが日本中認識されていませんよね?

片岡
されてません。今年の3月に岡山県の労働委員会が「コンビニ店主は労働者」という労働委員会の命令がでています。(11月28日号24ページ)これは現在セブン-イレブン、の不服申し立てで中央労働委員会にかかっていますが、地方の労働委員会の命令がでるだけでも相当これは、要するに立法の矛盾なわけです。本来労働者的な働き方をさせて、その利益を吸い取っている本部側の構図、本来本部は店長として雇って24時間営業させて利益は本部にいくならまだわかる。それでも残業代は払わなければならないですけど。今はお互いに独立した事業者という建前になっていて、働いている実態は労働者ということですから、今後フランチャイズ法がないと、これがこのままで労働法を脱法化した産業ということが実態としてさらに半世紀続くのかどうか。これは日本だけではなくて、アメリカでも訴訟が起きていまして、日米フランチャイズ紛争とでも言うべき状況になっている。
これは日本ではなかなか知られていないわけです。なぜならメディアが報じないから。

メディア最大のタブー セブン-イレブン

編集長
本当にメディアが報じないですよね。セブン-イレブンっていうのは私もラジオとか出てましたけども、セブン-イレブンの話だけはNGだっていわれたこともありますしね、本当に広く薄く広告であったりとか、雑誌界もコンビニエンスストアにおいてもらっていますからね。叩けないと、いろんなアングラをやっている雑誌とかでもコンビニの批判はできませんよ、という話は昔から聞いていましたけれども、私も電通とトヨタをやりましたけど、セブン-イレブンが今最大のタブーなのかなと思いますね。

片岡
そうですね。リテラ(LITERA)というネット内のニュースで『週刊金曜日』がやった連載あるいは、『セブン-イレブンの正体』『セブン-イレブンの罠』という本の中からわかりやすいところをきちんと的確にピックアップして、紹介してくれています。これが今ネットで反響をよんでいるようで、この本の売り上げも伸びているということを聞いていますが、そういう状況はネット内であれば、広告費(スポンサー)と関係ないのでどんどん広まって拡散できる。しかし、相当の広告費をつぎ込んでいるテレビあるいは新聞、雑誌などは真っ正面から批判ができない、という状況があってほとんど言論的にも封殺されているという状況です。ですが、多くの人にこのフランチャイズ、本当の言葉の意味での「解放される」「自由民になる」という業界になるように改善されれば、社会的にも地方の経済にとってもいい方にいくんじゃないかなと思います。

編集長
そうですね。リテラはサイゾーさんがプラットホームを提供しているサイトですけれども、そこでいろいろセブン-イレブンの記事を書くということで、ちょっと連絡もありましたけれど、セブン-イレブンについては『週刊金曜日』も『セブン-イレブンの正体』をだして、次に『セブン-イレブンの罠』というものを出しています。これも最近、突然火がついて今在庫がほとんどなくなってしまったということなんですけれども、このモデルというのはコンビニエンスストアだけの話じゃなくて、日本中に溢れている23兆円の産業を築いているフランチャイズのモデルというのをセブン-イレブンを通して見るということができるわけなんですね。なのでこの分野っていうのは私は本当にあくどいビジネスモデルとしてすごく逆に学ぶところがあるなと思っているので、それをやはりいろいろ研究して対抗した方がいいんじゃないかなと思っていますね。それ以外の記事として「セブン-イレブン“鈴木帝国”の落日」っていう記事もあってこれはまさに『セブン-イレブンの罠』を書いた渡辺仁さんが書いています。

片岡
渡辺仁さんがよく取材して書いています。セブン-イレブン、まさにフランチャイズの旗手として、この間伸びてきてトップをひた走っているわけですが、いよいよ鈴木敏文会長2015年10月退陣説というのがでてきています。これは全国のコンビニ、セブン-イレブンだけじゃなくてコンビニ業界のオーナーにとっては本当に注目する状況だと思います。なぜなら、という話はここで読んでほしいんです。一人が退陣してなんでそんなに影響があるのかは、この中を読んでいただければ分かるし、これは上となっていて下もあります。次回に続くということになるのですが、鈴木敏文さんだけの問題ではないということが中を見てみればわかります。そもそもフランチャイズ、全国に小売店が103万店あります。チェーン店の数は、今やその四分の一を超えた25万店以上になっておりまして、全国の小売り業界の中でフランチャイズがしめる位置が極めて高くなってなっていると、百貨店をコンビニは抜いておりますし、ガソリンスタンドの数あるいは郵便局も抜いています。 なのでこうした町並み(11月28日号表紙)が全国津々浦々決して珍しくない状況になっています。いろんな問題点があるんですけど、中野和子弁護士がここ(11月28日号22ページ)で指摘していますが、「地方経済を疲弊させた」というような指摘がありまして、これも非常に重要な指摘なわけです。なぜ地方が疲弊してしまうのか、ということが短いですがコンパクトに書いてあります。

地方経済の疲弊とフランチャイズ商法

編集長
非常に興味深い指摘でしたね。フランチャイズについて正面からその実際にある問題に取り組んだメディアっていうのはいまだかつてなかったのではいないかと思います。決してすばらしいビジネスモデルではなくて、オーナーの基本的には労働力を安く使っているというところに究極のその利益の源泉があるという話です。さらにそれが地方経済を疲弊させるということに拡がっていき、今後おそらくここ数年以内に大きな問題になるだろうと、そのことはもはや逃げることはできないんじゃないかなと思いますね。

片岡
そうですね。長谷川亜希子さんという弘前大学の准教授の方が指摘しているようにアメリカで訴訟が相次いでいると、この訴訟の中で先ほど言ったコンビニ加盟店オーナーが、独立した事業者ではなくて実は労働者であるという判決が仮に今後出てきた場合、日本も先ほど言ったように中央労働委員会にかかっています、これが出てきた場合にはコペルニクス的転回をフランチャイズ業界はしなければいけない、という状況になるわけです。その問題をおそらくメディアでは最初に指摘できた特集だと思いますので、ぜひ多くのフランチャイズのお店のオーナーの方に読んでいただきたいと思います。そしてフランチャイズの語源通りにオーナーの方たちが隷属的な契約と働き方から解放されて、自由民になるような、そういうような経済社会、労働社会になっていけば。フランチャイズもようやくそのときに社会貢献したということになるので、経済産業省のコンビニの地域貢献というような茶番ではなくて、きちんとした本質的な地域貢献をそのとき初めてできるという状況になるんじゃないかなと思います。

編集長
そうですね。フランチャイズをなくせという話ではなくて、適正に運用しなさいよ、という話です。なので105万店それぞれオーナーの方も数十万人いらっしゃると思うので、そういう方たちにぜひとも読んでいただきたい特集になっています。ぜひご覧ください。

片岡
オーナーも儲かる、地域も儲かる、そして本部も儲かればいいという状況にするためには、やはり出来るだけ早い規制が必要という認識に多くの人が気づいてほしい、最たるものは経産省ですが、そういうところから声が上がってほしいという思いを込めて作りました。