本誌「憲法キャンペーン」を始めるにあたって(上)
2017年11月1日6:01PM|カテゴリー:お知らせ|admin
『ヴァンドルディ(金曜日)』の精神
日本国憲法が「リストラ」の危機に遭わなければ――「憲法くん」の演し物を松元ヒロさんが生むこともなかったかもしれません。憲法を「リストラ」させまいと、この間、映画もつくられ、さまざまな書籍も出て、憲法カフェも開かれるようになりました。憲法改悪反対の声が、学者の議論や従来からの運動に加えてこれほど幅広い市民の運動となってきたのは、それが単なるイデオロギーの問題ではないからでしょう。私たちの生活や文化、いのちや平和にかかわる問題だからです。
しかし、特定秘密保護法・安保関連法そして共謀罪が成立してしまった以上、この幅広い抵抗運動を今後も自由に展開できるのか、不安は募ります。
最近、本誌を「金曜日」と命名した哲学者の久野収さんのことを思いだします。創刊直後、久野さんはこんなエピソードを語ってくれました。
「言論統制が敷かれていた戦時下、雑誌『土曜日』を仲間とともに発行していたときは、フィルムを茶筒にいれて隠さなければならなかった」
いまはその話を切実に肌で感じます。掲載前の原稿や写真データに当局が介入する危機感を、現実に抱いたことがあったからです。時代はいよいよ最終コーナーにさしかかったのでしょうか。金曜日が受け継ぐのは、第2次大戦中のフランス人民戦線が刊行した『ヴァンドルディ(金曜日)』の精神です。私たちは時代や場所を越え、市民の自由を脅かす圧政や体制に抗いつづけます。
総選挙が終わったいま、改憲勢力が3分の2を獲得し、「憲法改正」発議がひきつづき可能になりました。安倍政権の改憲への欲望はいよいよ高まるでしょう。
本誌ではその流れに対抗するために、さまざまな企画を予定しています。憲法特集だけでなく、「ぶれない・あきらめない・おそれない」(人物紹介)、高田健さんの「STOP! 9条改憲」、さらに佐高信編集委員による「憲法を求める人びと」などの連載を始めます。インターネット上の公式サイトでも展開していきます。私たちは、市民のみなさんといっしょに9条を守り、憲法をとりもどすためにたたかう覚悟です。これまで以上に事実と真実をお伝えしてまいります。
編集長・小林和子
『金曜日』の灯は消しません
おかしな夢をみました。
急な山道で車のハンドルを切り損ね、ガケから転落と思いきやまだ宙に浮いている。一瞬、からだも心もふわふわして気持ちよいので、このまま死んでしまったら幸せだなあと思ったのだけど、やはり思い直して必死にハンドルを回したら車はもとの道に戻った。
夢判断をする気はありませんが、目覚めたときに不思議な高揚感がありました。あきめるのは楽だけど、それはまだ早い。これからも峻厳な山道をどんどん登ろうと、もう一人の自分が語りかけてきました。
小林編集長が述べたように、憲法が危機に立たされています。それはまた戦後民主主義の危機であり、社会全体を覆う危機です。でも、私たち市民は自力で未来を切り開く力をもっています。そう簡単にガケから転落はしません。
実は、『週刊金曜日』はいま別の険しい山に直面しています。1993年の創刊時に4万3000部だった定期購読数が現在は1万3000部強に落ち込みました。部数減は影響力の低下につながります。この非常時を前に、一人でも多くの方に本誌を読んでいただきたいとの思いから、「憲法をとりもどす」キャンペーンとともに読者拡大キャンペーンを実施することにいたしました。詳細は下記の写真をクリックしてご覧下さい。
弊誌は小さいながらも澄んだ光を放ち続けてきたと自負しております。どんな苦境に陥ろうと、絶対にその灯は消しません。読者のみなさまのお力を借り、ぶれずにペンの力でたたかってまいります。ご協力をいただけますよう、心からお願い申し上げます。
発行人・北村肇
本誌「憲法キャンペーン」を始めるにあたって編集委員のメッセージ http://www.kinyobi.co.jp/news/?p=3841