編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ピロリ菌

 今年初めから食欲がなく、胃も痛かったので胃カメラ検査を受けた。勝手がよくわからなかったので、最初は苦しかった。だが、最近はカメラも細く、医師や看護師のアドバイスを受けながら、スムーズに検査を終えた。先日結果を聞きにいった。検査では十二指腸潰瘍が治った後が見つかったほか、胃にはいくつか気になるびらんがあったので、その一つを組織検査に回してもらっていた。「良性」とのことでホッとしたが、ヘリコバクター・ピロリ菌が見つかった。ピロリ菌は放っておくと、胃・十二指腸潰瘍や慢性胃炎、萎縮性胃炎、さらには胃がんを引き起こす。除菌することになった。方法は簡単。処方された薬を1週間飲み続ければいい。だが、ここで私にとっては難題が。薬を飲んでいる間は禁酒なのだ。ということで、本日から1週間は「禁酒週間」となる。

 連載コラム「STOP!9条改憲」の高田健さんによる執筆は今号が最後となりました。24年以上も書き続けていただいた高田さんに改めて感謝します。(文聖姫)

アンチヒーロー・ロス

 日曜日の楽しみがひとつ減ってしまった。TBSドラマ「アンチヒーロー」が最終回を迎えたからだ。「私があなたを無罪にして差し上げます」。長谷川博己演じる主人公の明墨正樹弁護士の決めぜりふである。そして、彼は殺人犯を実際に無罪にしてしまう。しかし、それはある死刑囚の冤罪をはらし、再審を勝ち取るためだった。最終回は怒涛の展開。これまでの伏線回収も済み、後味もよかった。すでに続編を望む声が出ているそうだが、私もその一人。「アンチヒーロー・ロス」に陥っている私としては、TBSさんにぜひ続編をお願いしたい!

 ドラマが冤罪を真正面からとらえていたのも印象的だった。袴田事件、飯塚事件、そして最近では大川原化工機事件など、冤罪によって人生を狂わされた人は少なくない。飯塚事件で犯人とされた久間三千年さんは、死刑が執行されてしまい、遺族である妻が再審請求を行なっている。犯罪者でないのに犯罪者にされる。そんなことは絶対あってはならない。(文聖姫)

昼下がりの読者会・こうべ

 6月2日、神戸元町で昼下がりの読者会・こうべ発足2周年の集いが開催されたので行ってきた。昨年に続き2回目の参加だ。この日神戸は快晴に恵まれ、歩くと汗をかくほどの陽気だった。そんな中、読者会のメンバーら約20人が集まった。市民デモHYOGO世話人の西信夫さんが乾杯の音頭。「まさか2年も持つなんて思わなかった」と話し、笑いを誘った。『週刊金曜日』からは私と、OBで現在は契約記者の佐藤和雄さんが参加。大江健三郎特集でお世話になった神戸市外国語大学の山本昭宏准教授も顔を出した。こんなに大勢の方がいらしたのも、読者会の世話人、片岡英夫さんのご尽力があったからだと思う。片岡さんは元高校教員だ。この日の進行は片岡さんの教え子2人が務めた。本誌を読んだこともない2人だが、「片岡先生のためなら」と、日曜の昼からまめまめしく世話を焼いてくれた。感謝!

 うれしい報告も。市民デモHYOGOとして、『週刊金曜日』を2部定期購読してくれることになった。(文聖姫)

孫石煕氏の講演会

 6月1日に京都市の立命館大学で開催された孫石煕氏の講演会に足を運んだ。孫氏は韓国の放送局であるMBCやJTBCでキャスターを務めた。韓国で最も信頼され影響力のあるジャーナリストといわれる。朴槿恵大統領を退陣に追い込んだ国政機密漏洩事件(崔順実ゲート事件)をスクープ報道したことでも有名だ。今年4月からは立命館大学産業社会学部で客員教授を務めている。

 講演は非常に示唆に富んでいた。ウクライナやガザで戦争が続き、台湾をめぐって米中対立が続くなか、東北アジアの平和などについて、自身が取材した映像などをもとに語った。ウクライナ取材の映像も紹介されたが、孫氏の取材中に警報が鳴り、地下に避難する映像は、まさにそこで戦争が起きている緊迫感を伝えるものだった。そのような場所に果敢に赴く現場主義のジャーナリスト魂を見た。

 韓国で著名なジャーナリストとあってか、場内からの質問者は全員韓国人留学生だった。終了後の写真撮影会には長い列が続いた。(文聖姫)

ケイト・ブランシェット

 ケイト・ブランシェットは好きな俳優の一人だ。「エリザベス」の演技は圧巻だったし、彼女が出演する「ロード・オブ・ザ・リング」は50回は見た。そのブランシェットが今年のカンヌ映画祭で見せたパフォーマンスにはしびれた。全面黒色、バックサイドが白色のオフショルダードレスで現れたブランシェットは、レッドカーペット上でドレスの裾を手で引き上げた。そこに現れたのは深緑色の裏地。黒と白、緑と赤の色彩は、見る人にパレスチナの国旗を思い浮かばせるものだった。即時停戦を呼びかけたのだ。

 イスラエルの侵攻によって、ガザの民間人らが殺害されているだけでなく、食糧を含む物資が搬入できないために飢餓に苦しむ人々が後を絶たない。子どもたちが少ない食糧に群がる姿を見ると胸が痛む。

 今号でもガザ問題を特集した。そして、ガザと同じく戦争によって民間人を含む犠牲が続くウクライナ。今年現地を訪れたジャーナリスト、先川信一郎さんの現地ルポ連載が始まる。(文聖姫)

文在寅と金正恩

 韓国の文在寅前大統領が今月回顧録を出版した。5月19日に配信された『毎日新聞』電子版の記事によると、金正恩・朝鮮労働党総書記は2018年4月に板門店であった文氏との首脳会談で、核・ミサイル開発に対する国連の経済制裁が「正直に言って、きつい」と語っていたという。「経済を発展させることが自分にとって最も重要な課題なのに、制裁のせいで難しい」と。確か当時、文氏は金氏に、南北経済協力の青写真を示した。板門店では二人っきりで話す場面もあった。そこで何が話し合われたのかは明らかにされていないが、おそらく経済問題について突っ込んだ話し合いがなされたのではないだろうか。

 その後、文氏が平壌を訪問するなど、南北関係は改善した。史上初の米朝首脳会談も実現した。そのまま関係改善が進んでいれば、金氏も核・ミサイルを放棄し、「経済を発展」できたはずだ。だが、米朝首脳会談決裂で再び膠着状態に。金総書記は韓国を「第1の敵国、不変の主敵」と表明するに至った。(文聖姫)

2024憲法大集会

 5月3日、東京・江東区の有明防災公園で開催された2024憲法大集会に行ってきました。憲法特集を掲載した最新号をはじめとする本誌や金曜日オリジナルの憲法Tシャツ、新刊の『増補版ひとめでわかるのんではいけない薬大事典』などの販売をするためです。スタッフ7人とともに、朝10時から午後4時頃まで店頭にたちました。

 この日は快晴とあって、昨年より7000人多い3万2000人の参加者(主催者発表)があったせいか、弊社のブースにも大勢の方々が足を止めてくださいました。私が店頭で最新号を持って宣伝をしていると、「これください」と言ってくれた方や「定期購読者です」と声をかけてくださる方もいました。「経営が大変なんでしょ? 金曜日がなくなっちゃうといけないわよね」と言って買ってくださる方も。励みになりました。「コロナワクチンの弊害についてきちんと報道して」というお叱りも受けました。日頃は直に接することのない読者と触れ合う絶好の機会。来年も行くつもりです。(文聖姫)

自民党への「ノー」

 自民党のおごり高ぶりに有権者は「ノー」を突きつけた。4月28日に行なわれた衆議院補欠選挙は、東京15区、島根1区、長崎3区のいずれも立憲民主党の候補者が勝利した。自民党は候補者擁立を見送った選挙区を含むすべてで議席を喪失した。

 保守王国として知られる島根でも立憲の元議員、亀井亜紀子氏(58歳)が早々と当選を決め、東京15区では過去最多の9人による争いを勝ち抜いた立憲の新人、酒井菜摘氏(37歳)が当選した。長崎3区では日本維新の会候補と一騎打ちの末、立憲の前議員、山田勝彦氏(44歳)が当選した。本誌4月12日号は「衆議院3補選の結果次第では、岸田政権の崩壊が見えてくる」と解説していた。さて、今後の展開はどうなるか。東京15区では、乙武洋匡氏(48歳)の結果が振るわなかったことも話題に。応援した小池百合子東京都知事の影響力にも陰りが見える。

 今号の校了日は5月2日です。連休中の出来事は5月17日号以降の掲載になることをご了承ください。(文聖姫)

編集長後記

 ウクライナの戦争は終わりが見えず、イスラエルによるガザの空爆が続き多くの民間人が犠牲となっている。イスラエルとイランの情勢もきな臭い。戦争放棄を宣言した日本国憲法の意義はさらに増している。今年も憲法記念日がやってきた。本誌では毎年この時期の合併号で憲法特集を掲載しているが、今年ほどその真価が問われている時はないだろう。東京・有明防災公園では5月3日、第10回憲法大集会が行なわれる。本誌でも販売ブースを設置し、『週刊金曜日』などを販売する。私も昨年に続き参加する。

 私が東京集会の準備をしていると、発行人の植村隆が「私は北海道北見市民会館での憲法集会に講師として参加するので、東京の集会には顔を出せない」と言って、カンパをくれた。「カンパで弁当を差し入れる」というのだ。ありがたくいただいた。発行人からもらったチラシによれば、集会名は「日本国憲法を読む103人の集い」。5月3日午前10時~正午開催。第1部は参加者による日本国憲法の朗読だという。(文聖姫)

ゆめホールシネマ倶楽部

 JR南武線・向河原駅から歩いて5分ほどにあるかわさきゆめホール(神奈川県)で定期的に開催されている催しがあります。「ゆめホールシネマ倶楽部」。ドキュメンタリーや劇映画などを上映するもので、時にはゲストによる講演などもあります。ひょんなことから、この催しにかかわるようになりました。最近は本職が忙しくてなかなか行けてはいませんが、『原発をとめた裁判長』『ニューヨーク公共図書館』などのすばらしい作品を上映してきました。今年1月には『ガザ—素顔の日常』も上映しています。

 そして、4月23日から27日まで5日間にわたって『雪道』が上映されます。15歳の時に日本軍の「慰安婦」にされ、過酷な人生を送った二人の少女が主人公です。フィクションではありますが、多くの日本軍「慰安婦」被害者の証言に基づいています。

 上映は4月23日〜25日が9時・12時・15時の3回、26日〜27日が9時・12時・15時・18時の4回。問い合わせ・申し込みはTEL044(433)3003まで。(文聖姫)