編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

兵庫県知事選挙

 11月17日に行なわれた兵庫県知事選挙。パワハラ疑惑などで失職した齋藤元彦前知事が予想に反し、再選した。勝因はSNSを駆使した大量の情報拡散だったという。

 既存メディアは公平公正を保つために特定の候補に偏った報道はできないとされるがSNSにはそれが及ばず、公職選挙法で想定されていない事態が起きたということだろう。事実であってもなくてもネットにあがった情報は一人歩きし、拡散されていく。

 驚いたことに齋藤前知事に投票した有権者の多くが、そういったSNSの情報を信頼して見ていたようだ。今後も起こり得る同様の事態に、法律や既存のメディアはどう対応していくべきなのか。本誌でも考えていきたいと思う。

 今号の長生炭鉱特集は8月2日号に続き、「遺骨」という視点で崔善愛さんに責任編集していただいた。TBSでは石炭産業で躍進した当時の長崎県・端島(軍艦島)が舞台のドラマ「海に眠るダイヤモンド」が放送中。炭鉱シーンは実際の鉱山で撮影されたとか。(吉田亮子)

竹ちゃん

「毎日おしゃべりして、ときどき勉強。困ったことは、竹ちゃん(センター長の竹川真理子さん)に相談する」

 そんな「居場所」だよと、NPO法人在日外国人教育生活相談センター・信愛塾(横浜市南区)を紹介した中学生。11月9日、信愛塾45周年記念集会が同市内であった。

「ある日の信愛塾」を紹介する動画では、けんかする子どもに「本を投げない!」と大人が日本語で注意するが通じていない。中国語や韓国語、タガログ語、英語、日本語が飛び交い、保護者も訪れる。

外国に連なる子どもたちは増え続け、学校や行政からも「なくてはならない存在」と相談が絶えない一方で、財政はきびしい。そこで10月、クラウドファンディングを開始した。それでも竹ちゃんは「お金ではなく、(大切なのは)人」と、まわりのスタッフや成長した子どもたちに日々助けられていると話す。

 今号から編集長を担うことになった。本誌も財政はきびしいが、「人」を大切にした誌面作りをしていきたい。(吉田亮子)

編集長交代

「原作者の弘兼(憲史)氏と講談社は『当事者の確認が取れていない伝聞でした』として、謝罪しましたが、内容は謝罪とは言い難い。心から謝罪する気があるなら、雑誌を回収し、辺野古テントに来て、みんなの前で謝罪すべきです」。沖縄・名護市に住み、日米の軍事基地がなくなることを求めて反戦活動を続ける中山吉人さん(67歳)からこんなコメントが届いた。漫画「社外取締役 島耕作」で、普天間基地の辺野古移設に抗議する人たちについて、キャラクターが「日当で雇われた」と語るシーンが登場した件だ。平和を祈って座り込みを続ける人々への侮辱は断じて許せない。通り一遍の謝罪で終わらせてはならない。

 11月1日で3年間の編集長任期が終わりました。編集長として携わるのはこの号が最後です。楽しいことも、落ち込むことも、泣きたいこともたくさんあった3年間でしたが、終わってみればあっという間。次号からは吉田亮子編集長にバトンタッチします。引き続きご愛読をよろしくお願いします。(文聖姫)

総選挙のとばっちり

 突然の衆議院解散・総選挙が、まさか自分に影響してくるとは思わなかった。実は10月20日に東京・板橋区でジャーナリストの青木理さんと対談をすることになっていた。「高島平ドキュメンタリー映画を見る会」の山名泉さんらが、半年以上前から準備していたイベントだ。50回目という節目でもあることや青木さんを招くことで、会のみなさんも力を入れて準備を重ねていた。ところが、9月下旬、山名さんたちは区から突然「場所を貸せなくなった」と告げられた。予約していた場所は区の公民館だが、そこを期日前投票の会場にするからというのが理由。山名さんらは代替会場を探したが、300人規模の場所が簡単に見つかるわけではない。仕方なく延期を決めた。ひどい話だ。そもそもこんなに急いで選挙をやらねばならない理由がどこにあったのか。

 在日コリアンの私には選挙権がない。だからこそ、日本のみなさんに託したい。2日後の選挙結果は、日本に定住する外国人のくらしにも関わってくるのだから。(文聖姫)

ピロリ菌撃退

 6月28日号の本欄で、胃カメラ検査でヘリコバクター・ピロリ菌が見つかり、除菌したことを書いた。繰り返しになるが、除菌方法は簡単。処方された薬を1週間飲み続ければいい。ただ、その間はお酒が飲めない。“呑兵衛”の私にとっては、これが一番大変だった。多くの人が1回の治療で除菌できるようだが、まれに失敗する人もいるらしい。私の周辺でも3回目でやっと成功した人がいた。

 10月4日、検査に行った。見事除菌に成功! これで胃がんになるリスクも低下する。だが、もらった紙には「ゼロになるというわけではありません」と書かれていた。医者には、今後年に1回程度の胃カメラ検査を受けるように言われた。胃粘膜の炎症が除菌によって軽減することにより、除菌前には見えなかった病変が発見されることもあるとのこと。胃カメラは苦しいが、ほんの数分で終わる。それで病気を事前に防げるとしたら、少しの苦しみは耐えられる。それにしても、「禁酒1週間」を再びやらずに済んでよかった(笑)。(文聖姫)

どうして解散・総選挙?

 10月9日、衆議院が解散した。総選挙は27日だ。石破茂首相は、当初の方針を覆し、早期の解散・総選挙に踏み切った。野党とじっくり国会論戦を繰り広げることを避けた形だ。自民党の顔が変わり支持率が上がっている間に総選挙に打って出て、自公政権継続を目論んでいるのだろうか。だが、『毎日新聞』と社会調査研究センターが3日に実施した世論調査で、内閣支持率は46%と、半数を下回った。発足当初はある程度高い支持率が出るはずだ。やはり、総選挙をめぐる石破首相の「ブレぶり」や統一教会問題にきちんと対応していないことへの世論の批判とみてよいのではないか。それを意識してか、石破首相は6日、「相当程度の非公認が生じる」と述べた。

 石破内閣に女性が2人しか入閣しなかったことも問題だ。第2次岸田文雄第2次改造内閣では、5人が女性だった。世界の流れからみても、増えこそすれ、減るとは……。永田町の「マッチョ政治」を破るのは至難の業なのだろうか?(文聖姫)

社長就任のご挨拶

 9月24日、株式会社金曜日の株主総会が開催され、新しい取締役会が発足しました。その後の第1回取締役会で、私、文聖姫が社長兼発行人に選出されました。私の編集長任期は今年11月1日までですので、約1カ月間は社長兼発行人兼編集長を務めることになります。

 3年前、初めて導入された編集長公選制に基づく社内選挙で、私は編集長に選ばれました。至らない点も多々ありましたが、読者のみなさまの温かい支えとスタッフの協力のおかげで、なんとかここまでやってこられました。感謝の気持ちでいっぱいです。次期編集長を選ぶ選挙も遠からず実施され、11月には新しい編集部体制が発足します。その報告は改めてさせていただきます。

 私は編集長として各地の読者会にお邪魔するなど、読者との交流も深めてきました。社長としても、読者のみなさまとの交流を引き続き深めていきたいです。これからもよろしくお願いいたします。社長就任の正式なご挨拶は、来週号に掲載します。(文聖姫)

総長カレー

 今週号の「編集長が行く」にご登場いただいた尾池和夫さんをインタビューしたのは今月6日、本社応接室においてだ。ちょうど東京に用事があるという尾池さんに、用事の前に立ち寄っていただいた。その際、おみやげにレトルトの「総長カレー」を、京大生協でわざわざ購入してきてくださった。カレー誕生の経緯についてはインタビューをお読みいただきたいが、カレーの箱の裏にはこうある。「……その味はまさに本格派!香味野菜と9種類の香辛料(ローリエ、クローブ、カルダモン、シナモン、コリアンダー、ターメリック、クミン、唐辛子、マスタード)とトマトで仕上げたスパイシーなソースに、りんご・バナナで甘みを、ココナッツミルクでコクを加えた、風味豊かな本格派ビーフカレーです」。読むだけでよだれが出てくる。

 実はまだカレーを食していない。インタビューを校了するまでは、何か確認事があるかもしれないと思ったからだ。無事校了を終えたこの週末に、じっくり味わいたいと思う。(文聖姫)

立憲民主党代表選と自民党総裁選

 先週号では民主党の米大統領候補、カマラ・ハリス氏を中心に米大統領選について特集したが、今号の特集は日本の立憲民主党代表選と自民党総裁選である。自民党総裁選は9月27日が投開票日だ。立憲民主党代表選は一足早く23日に投開票が行なわれる。「敗戦の日」の前日に岸田文雄首相が総裁選不出馬を突如表明したことによって、自民党では次々に候補者が名乗りをあげた。結果的に20人の推薦人を確保できた9人が立候補した。いろいろと公約を並べているが、国民が最も怒っている「裏金問題」については歯切れが悪い。統一教会問題もしかり。結局、自民党得意の「党内政権交代」ではぐらかそうとしているのではないか。

 一方の立憲民主党は4人が立候補した。なかでも目を引くのは当選1回の吉田晴美・衆議院議員である。1年生議員が代表選に挑戦することで、永田町の常識を覆したと言われるが、彼女のチャレンジは永田町に「新風」を吹かせるか。本誌ならではの特集となっています。(文聖姫)

カマラ・ハリス

 2020年11月13日号の本誌の表紙もカマラ・ハリス氏の顔写真だ。タイトルは「ハリスが変える歴史」。民主党のバイデン大統領が勝利し、ハリス氏が女性初の副大統領となった。大統領に継ぐ2番目に高くて堅い「ガラスの天井」を破ったわけだ。4年後、高齢のバイデン氏が再出馬しなければ、ハリス氏が初の女性大統領候補になるかもしれない。当時はそんな期待もささやかれていた。だが、副大統領としてのハリス氏の手腕が聞こえてくることはあまりなく、むしろ「移民政策での失敗」などが指摘されていた。今年、バイデン大統領は自ら再出馬した。だが、トランプ氏とのテレビ討論対決は精彩を欠いていた。記者会見ではこともあろうにゼレンスキーをプーチンと間違え、誰が見ても「大丈夫か」となった。

 今号の特集は「カマラ・ハリス」。表紙タイトルは「ハリスは歴史を変えるか」。米国で初の女性大統領が誕生すれば、歴史は変わる。一方で、ガザへの対応などは内外から批判を浴びる。そうした問題も取り上げた。(文聖姫)