ライブドア、フジテレビの攻防は、とりあえずフジが勝つだろう。理由は、権力をもった「大人」のほうが質悪だからだ
2005年3月11日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
「命より健康が大事」そうな人はたくさんいる。健康診断の数値に一喜一憂し、万歩計の数字を確認しないと、おちおち眠れない。「生きている喜び」を感じるとき、それこそが健康な状態のはずなのに、数字的裏付けのほうが重要かのよう。中には、ジョギング時間を少しずつ増やすことに「命をかけている」人もいる。
ゲーム感覚なのかなと思う。「健康」と勝負して、勝った負けたのような。ライブドアの堀江貴文社長をみていて、同様のことを感じた。金もうけも企業買収も、一つのゲーム。目的は「勝つ」ことにあり、そこから先に、目をみはるほどのビジョンがあるとも思えない。だから、臆せず、どんな手でも使う。
ファミコン世代は、中高年に比べゲームに慣れている。勝つために何をしたらいいのか、そのあたりの感性も優れている。どんな武器が相手に有効か、この場面で必要な戦法は――日々、三国志の登場人物並みに頭を巡らせているのだから当然だろう。
瞬間の判断力、反射神経も凄い。たとえば中学生や高校生とどんなゲームをしても、まずは勝てない。かつてだったら、相撲や駆け足はもちろん、トランプでもカルタでも、大体は、大人が勝ったものだ。
マネーゲームの勝者はこれからどんどん、若返るだろう。「金もうけ」というゲームに若者がどっぷり浸かれば、大人はなかなか太刀打ちできない。
だが、ライブドア対フジテレビの攻防について、私は常に「フジが勝つ」と言い続けてきた。一部の「大人」には、違う力があるからだ。築き上げた権力・権威を守ろうという貪欲さである。これは強い。特に権力者クラブが一致団結したときには、たとえようのない底力を発揮する。
むろん、フジ側を応援する気はまったくない。権力者には、自らの力を誰のために使うのか、目的意識のはっきりしない連中が多い。組織の中で、ライバルを蹴落として出世街道を歩む、これもまた古典的なゲーム。そんな勝者や、赤絨毯を踏むことが最大の目的のような議員に、堀江氏を批判する資格はない。どちらが質悪か、はっきりしている。 (北村肇)