小泉首相に肩をたたかれ慰められるような野党代表なら、直ちに職を辞すべきだ。
2006年3月10日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
危ういなと直感的に思った。メールの真贋など、その時はまったくわからない。ただ、国会で質問に立った永田寿康議員の態度が気になったのだ。いかにも鬼の首をとったような、尊大な態度と口調。自民党幹事長とライブドアの癒着を暴くとなれば、大スキャンダルである。獲物が大きければ大きいほど、普通、物言いは慎重になる。新聞や雑誌でもそうだが、スクープの場合は、比較的、落ち着いた表現で書く。そのほうがかえって迫力が出るからだ。
その後、メールを持ち込んだ人物がわかり、愕然とした。過去にも裏付けのない記事を雑誌に売り込み、何度か問題を起こしているライターだったからだ。最大野党がその程度の情報をつかめないはずもないだろうにと、不思議に思っていたところ、永田町関係者にこう聞かされた。「メール問題は永田議員と野田国会対策委員長だけで進めていた。多くの民主党議員は国会のやり取りで初めて知ったらしい」。
手柄を立てたいばかりの勇み足。そうわかると、成績はいいけど人気のない学級委員長といった、あの童顔に納得する。だが、残念ながら国会は小学校ではない。一億人を超える市民・国民の生命や暮らしに責任を負っているのだ。自民党や武部幹事長に謝罪するだけでは何の意味もないし役にも立たない。
反省しているのなら、なぜ追及を続けないのだ。武部幹事長とライブドアの堀江元社長をめぐっては、さまざまな情報が飛び交っている。メディアもまだ取材を続けており、何が飛び出すかわからない。むろん、偽造メールを本物と見誤ったことは申し開きのしようがない。しかし、それと本質的な問題はまったく別次元の話だ。癒着の真偽を突き詰めることは、野党として当然の責務である。
それがどうだ。党をあげて「ごめんなさい」のオンパレード。あげくは「今後はこの問題(武部幹事長とライブドアの関係)に関しては追及しません」と受け止められても致し方のないような“謝罪文”。一体、何のための野党なのか。小泉首相に肩をたたかれ慰められるような代表こそ、直ちに職を辞すべきだ。
今週号で、かつては参議院のドンと呼ばれ、KSD事件で失脚した村上正邦氏のインタビューを掲載した。本誌と同氏の主義・主張がかみ合うことはない。むしろ対極にあると言ってもいいだろう。だが、肝心なところで腰砕けしてしまう最大野党の議員連中よりは、はるかに胆力がある。 (北村肇)