高校生のころ書いた、小説とも言えない雑文を思い出した。ある動物園で「支配者」を決める選挙が行なわれる。圧倒的力を持つゾウが大本命だが、彼の強権的姿勢に反感を持つグループがペリカンを立候補させる。投票時には支持率が逆転、ペリカンの勝利は揺るぎないようにみえた。だが、勝ったのはゾウだった。

(さらに…)

　さすらい人のように見知らぬ土地をめぐってきた風が、ふと鼻腔に春を運んでくる。しっかり確かめようとしたときにはもう、気まぐれな風は冴えわたった冷気に溶け込み、あっかんべをしている。何度かこんなたわむれをしているうちに、モモやサクラが色づいてくることだろう。いつもながら春は待ち遠しい。

(さらに…)

　雪国の方には申し訳ないが、都心でのごくまれな雪は想像力をかきたててくれる。天女が寒さで身震いし、衣の繊維がサラサラと地上に舞い降る。普段は味気ないビル群を覆い尽くしたそれは、汚れきった人間の魂をも清め、ふたたび天上へと戻っていく。運が良ければ、七色に輝く結晶をみられるかもしれない。

(さらに…)

「この人は心から笑ったことがないんだなあ」とか、「笑い方を知らないんだなあ」とか、そんな人物に出会うときがある。最近では、福田康夫首相が典型。笑おうとすると、口元が変に歪んでしまう。眼鏡の奥で目はぎらついたままだし、感じるのは皮肉っぽさだけ。一方、民主党の小沢一郎代表はどうか。こちらも似たり寄ったり。ごくまれに破顔一笑といった風情もあるが、どうにも垢抜けない笑顔だ。

(さらに…)

「うらやましい」と感じることが減ってきた。羨望のまなざしと無様な嫉妬心で固まった若い頃が、ようやく昔話になりつつある。もちろん皆無ではない。無私無欲で暮らしている人に出会うと、「自分もこうなりたい」と、それこそうらやむ。金や名声など浮ついたものに、心が少しざわつかなくなっただけだ。

(さらに…)