編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

『週刊金曜日』は与党雑誌にはなれない、ならない

 2ヶ月のわかるカレンダーが残り一枚になった。月日が立つのは早いなど常套句を言う気にはなれない。いつもの「一年」とは違っていた。歴史の転換期を駆け抜けた鼓動の乱れが収まらない。

 国会中継を見る。激しく政府を質す自民党の元閣僚や幹部議員。ときには余裕の風情で、だがときには追い詰められた表情で答弁する鳩山由紀夫首相。これが09年11月の風景だ。

「与党雑誌になりましたね」と言われることがある。社民党も加わった連立政権だから、そう思われても仕方ない。しかし、事実は異なる。ジャーナリズムが与党になびくことはありえない。常に権力とは距離を置き、批判と監視の対象とする、それが報道の姿勢である。ここが揺らいだら、『週刊金曜日』の存在する意味はない。

 本誌は、マスメディアが事実や真実を伝えていないという実態を背景に生まれた。なぜ事実、真実が報じられないのか。一つは「立ち位置」の問題だ。権力を持つ側となれあってしまえば、そこでなされる報道はプロパガンダに堕しかねない。与党寄りと言われた『読売新聞』や『産経新聞』は、明らかに自民党側に立った報道を続けてきた。

 自民党が下野したいま、両紙の論調は民主党政権に批判的な色合いをもつ。だが、これから先はわからない。仮に参議院でも民主党が圧勝、政権が盤石となった場合はどうか。予断は避けねばならないが、与党新聞になることは大いにありうる。一旦、権力と二人三脚になりそのうまみを知ったメディアが覚醒するとは思えない。そして、マスコミが堕落したままなら、民主党の自民党化は避けられないだろう。

 本誌今週号で、民主党衆議院議員308人の全調査を行なった。『週刊金曜日』初の試みだ。同様の企画は他の新聞社系週刊誌も別冊で展開した。こちらも力作ではあった。だが視点はかなり異なる。私たちは、議員をなるべく”冷たい視線”でみるようにした。特に、憲法観、戦後責任、原発政策にはこだわった。想像はしていたが、いわゆる「右派」議員がかなりいる。

「取り上げ方が客観的ではない」と感じる方がいるかもしれない。しかし、報道機関には常に、こうした立ち位置が求められる。どんな権力でも必ず腐敗する――この真実はカレンダーをどうめくっても変わらないからだ。(北村肇)