炎天下に「権力」という名のシミをさらしてはどうですか。議員のみなさん。
2010年7月30日9:00AM|カテゴリー:一筆不乱|北村 肇
「心頭滅却すれば……」と言うが、「頭」はともかく「心」のありようで確かに「暑さ」の感じ方も変わってくる。気分が前向きのときは、ギラギラした陽光が、心身に染みついたカビを一掃してくれるようで、全身を開放したくなる。じめじめした梅雨よりは余程いいやと、したたり落ちる汗がちっとも苦にならない。
太陽の真下をイメージし、不快なこと、許せないこと、恨みごとを取り出しては溶かしてみる。あとに残るのは、清々しい気分と慈しみの心。ここまでは完璧だが、所詮、完璧ではありえないのが人間の性。数時間後にはすでに怒りや憎しみに侵される。やれやれだが、でも、時折、カビの一掃を図るのは悪くない。
参院選に揺れた永田町。表面上は夏休みに入るが、水面下では、秋の民主党代表選に向け、国会議員には暑すぎる季節が訪れる。まあまあ、そんなに焦らず、ここはじっくりと自省してみてはどうか。特にお勧めなのは、「権力」という名のシミを日光にさらし、自分という素裸の「命」に向き合うことだ。
誤解されるかもしれないが、私は「権力」を全否定はしない。何事においても事態を収拾したり、推進したりするためには「力」が必要となる。有無をも言わさず、反対を押し切って信ずる道を切り開かざるをえないときもある。だからこそ、権力を持つ者は孤独に、そして真摯に、私利私欲を極限まで遠ざける姿勢を持ち続けなければならないのだ。
翻って、いま、この国の為政者の多くには権力者の資質も資格もない。沖縄の米軍基地問題は、米国、ゼネコン、国会議員、官僚といった、力を持つ者の欲が背景にある。消費税率アップは、輸出産業を主とした大企業の欲が見え隠れする。
さて、永田町では、民主党、自民党の「大連合」が再び、ささやかれている。参院選の結果、民主党は絶対的な第1党の座を滑り落ちた。いわば第1・5党と第2党が手を結ぼうというわけだ。実現したら、かつてない巨大な権力党が誕生する。この欄でも触れたが、日米軍事同盟の強化という点で両党の違いはなく、辺野古沖への米軍基地建設は簡単に実現してしまう。消費税率アップは、もともと自民党が言い出し、民主党が相乗りした。これもまた、他党が反対しても国会を通ってしまうだろう。
私利私欲に走る国会議員は「絶対権力」に大きな魅力を感じる。大連立が抱える落とし穴もそこにあるのだ。民意無視とはつまり、人間性喪失の政治でもある。(北村肇)