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民主党代表選で小沢惨敗をもたらしたマスメディアは絶滅危惧種

 新聞がここまで落ち込んだ要因の一つに、空疎な「客観」「公正・中立」を掲げ、「主張」を失ったことがある。だが、最近はさらに腐敗の度を深め、マッチポンプ役を平然とした態度でこなしている。典型は世論調査だ。特定の方向に世論を引きずるため「多数決原理」を利用しつつ悪辣な宣伝活動をしているのだ。
 
 最も影響力の強い『朝日新聞』の「主張」は日米同盟の堅持であり、そこに反旗を翻す小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏は批判対象となる。だが、事実に基づかない主張はプロパガンダにすぎない。たとえば、辺野古沖への米軍基地移転推進が「国益」にかなう事実をどれだけわかりやすく読者に提示したのか。これまでも何度か指摘してきたが、米国に都合のいい報道が目立つばかりだ。
 
 政治とカネの問題に関しても、「小沢氏はカネに汚い」という印象を植え付けるような報道が中心で、法に抵触した事実を独自に抉り出したわけではない。むしろ、本来の同紙なら、東京地検の行き過ぎた捜査を批判すべきなのに、事実と無関係の「小沢つぶし」は目に余る。
 
 そして民主党代表選。『朝日新聞』を始めとした大手紙は、何度も世論調査を実施し、そのたびに「小沢氏とカネ」を強調した。紙面であおり、世論調査を行ない、その結果でまたあおる。代表選当日の『朝日』社説には言葉を失った。「小沢氏の立候補は理解しにくい。……最高指導者たろうとするにしては、けじめがなさすぎるのではないか」。同紙はこれも「主張」と言うのだろうが、アジテーション以外の何物でもない。客観的に見て、多くの新聞は小沢氏の足を引っ張り続けた。これはもはやマスコミファッショだ。
 
 小選挙区制になり、国会議員はますます世論動向を気にするようになった。国会議員票が思ったより小沢氏に流れなかったのは、マスコミ報道を見て寝返った議員が多かったからだろう。地方議員やサポーターが菅氏を圧倒的に支持したのも、新聞やテレビの影響が大きかったことは間違いない。菅直人氏の勝利はマスメディアがもたらしたと言っても過言ではない。

 インターネット上では、むしろ小沢氏支持の世論が多数派だった。ネット情報を重視する人々からは、新聞やテレビという大マスコミは既得権者として見られている。そうしたメディアの報道が胡散臭く感じられたことによる小沢支持とも考えられる。とするならば、大マスコミが絶滅危惧種になるのは時間の問題ではないか。(北村肇)