編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

なんと今週は本年最終号。

編集長後記

 なんと今週は本年最終号。週刊誌づくりに携わっていると一年がほんとうに早く感じる。ありがたいやら、寂しいやら。などと毎年同じことを書いているような。

 今年は電子書籍元年だそうだ。ようするにアップル社のiPadが発売されたからだろう。秋頃のブックフェアに行ったときも、iPadや電子書籍関連は熱気があった。ただ、それまでも電子書籍端末は作られていた。一〇年以上も前に、シャープに勤めていた友人が電子書籍端末を研究していたことを思い出す。

 私も数カ月前にiPadを購入した。大量の本や書類をデータ化して持ち運びできることは便利だ。自宅のあふれた本を早く“自炊” して処分できる。素敵だ。だけど、なにも実現していない……。しかも電子書籍もほとんど読んでいない。リアルの本は大量に読んでいるのに。今やiPadは三歳の娘のゲームマシンだ。読み手にとって電子書籍はまだ先の話らしい。iPadがもっとも役に立ったのは、特集での写真撮影に使えたことかな。  (平井康嗣)

長寿先進国のイメージがすり込まれているが、自殺や孤独死など不幸な死者を生み出し続ける今の日本社会は異常だ。

編集長後記

 長寿先進国のイメージがすり込まれているが、自殺や孤独死など不幸な死者を生み出し続ける今の日本社会は異常だ。そこで、今週号は実は身近に存在している「死」を見つめることにした。死を意識すれば、生をあらためて感じるということもある。卑近な例だが私も一九歳の時、車で山に激突、全損する事故を起こし、九死に一生を得たことがあり、それを機にようやく少しは真面目に勉強しようと思い立ち、丸刈りにもした。

 ところで楽屋オチかもしれないが、今週号の編集委員座談会でもっとも衝撃的だったのが、本多勝一さんがトレードマークであるかつらとサングラスを外して写真を載せたことである。ご本人の講演後の打ち上げなどで素顔を見た読者も少なくないと思うが、それでも写真撮影は基本的にNGだった。右翼筋からご自身や家族が命を狙われていたことがあるからだ。「本当にいいんですか」と出席者は口々に言ったのだが、「もう誰もおれを狙っていないでしょ」と本人は飄々としたものでしたよ。   (平井康嗣)

ウィキリークス、市川海老蔵、新幹線新青森開業が昨今の三大ニュースだった。

編集長後記

 ウィキリークス、市川海老蔵、新幹線新青森開業が昨今の三大ニュースだった。
 海老蔵については暴対法関連で言いたいこともあるが、特に気になるのはウィキリークスだ。日本では随分叩かれているが、重要性の高い国家機密文書を入手したら多くの記者が得意になって報道してきたのに不思議なことだ。飲ませ食わせもして政治家や公務員から情報や「紙」をとるのがメディア関係者の仕事、それができるほど評価されてきた。それをウェブを利用しシステム化しつつあるのがウィキリークス。使命感に燃えたハッカーやジャーナリストが協力して機密文書を公開し始めたら、旧メディアは商売上がったりだろう。
 ウィキリークスと協力しているアイスランドでは「不透明なタックスヘイブン(租税回避地)ではなく、国際的な調査報道の回避地、透明な天国を目指す」という提案が国会でなされ、進んでいるという。警察公安情報流出でも亀のように動けず、沼のように不透明な日本にいると信じられない話である。(平井康嗣)

今週は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の砲撃事件を特集した。

編集長後記

 今週は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の砲撃事件を特集した。今回の事件をいかに理解するべきか。複数の信頼できる朝鮮半島の専門家に聞いたところ、米国と北朝鮮が対話をするしかないという結論に至った。なぜか。朝鮮戦争の休戦協定を締結した相手方である米国しか戦争状態を終了させる相手はいないと北朝鮮が考えているからだという。分析すれば北朝鮮の論理は一貫している。力も金もない弱者が生き残る術は理屈だけだからだ。だが、その国が核を持つまでに至った。北朝鮮との和平協定交渉を放置してきた米国の責任である。米国の世界軍事戦略上、北朝鮮という仮想敵が必要だった。在韓米軍、在日米軍は北朝鮮への抑止力として第一義的に存在しているわけではない。一方、日本のマスメディアは米韓演習で北朝鮮が戦争を起こすと扇動する始末。悪質で滑稽である。さて、「抑止力」の前線に立たされている沖縄県の知事選では現職の仲井眞氏が勝った。変節せずに米普天間飛行場の県外移設の公約を貫いてほしい。(平井康嗣)