編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ソフトバンクの孫正義社長が東日本ソーラーベルト構想をぶちあげている。

編集長後記

 ヤフー、アイフォンと米国ビジネスを買い取り巨大化してきたソフトバンクの孫正義社長が東日本ソーラーベルト構想をぶちあげている。ビル・ゲイツが東芝との次世代原子炉開発はじめエネルギー事業に乗り出そうとしていることを考えれば、孫社長が関心を持っていても不思議ではない。

 一方、脱原発への批判も始まっている。マスコミでいえば読売や産経。自然エネルギーは二〇年前からある古い議論で成功していない、やはり原子力エネルギーは先進国には必要だという”古くさい”論理だ。このような状況では、孫の“ベンチャー”精神を応援したいと思うが、孫かあー、と溜息も隠せない。

 二〇〇九年六月一二日号のソフトバンク特集でホリエモンこと堀江貴文氏に話を聞いたことがある。「孫さんは超巨大になる会社を大金で買うスタイル」「貪欲」と指摘していたが、つくづくその通りだと思う。高い買い物をする、莫大な借金をして「大きすぎて潰せない」を狙う、株式会社だから実は本人はノーリスク……。眉に唾つけて見守ろう。(平井康嗣)

メディアに対してだけでなく、教育や教科書へも読み解く力(リテラシー)が必要である。

編集長後記

『週刊金曜日』を含むメディアに対してだけでなく、教育や教科書へも読み解く力(リテラシー)が必要である。その際、何を教えられているかに目をこらすことは当然である。一方で何が教えられていないのか、を見ようとすることも大切だろう。いずれにしても子ども自身には難しく、大人の責任は重い。

 さて、私もそうだが、友人の家族は子どもへの放射能汚染を気にしている。最近、水道水の汚染は「基準値」以下になっているが、飲ませないほうが安心だ。彼の家族は、これまでお目にかかったことのない韓国製のペットボトル水を買い込んでいた。安いと言うがタダではない。不安を感じていても余裕がない親は、後ろめたい思いで子どもに水道水を飲ませ続けているだろう、と、ふと思った。原発事故は、子どもに安全を与えられないという無用な罪悪感や悲しみを親に与えてしまった。このことへの感受性を東京電力や原子力行政の大人たちは持ち合わせているのだろうか。教育現場の大人たちはどうなのだろう。 (平井康嗣)

宮城県石巻市の中心部や牡鹿半島に行ってきた。

編集長後記

 連休前に宮城県石巻市の中心部や牡鹿半島に行ってきた。ちょっとした縁のある半島の集落には日本酒や糯米など春祭りの足しになるものを渡してきた。ある小学校の避難所に話を聞きに行くと、避難者はピーク時から半減していた。身よりのないお年寄りばかりが残っていたのだ。お年寄りは生活してきた土地や既存の人間関係を大切に思い、移動を好まないということもあるだろう。避難所にいる「ボランティア」(誰かがやらなければ避難所が機能しないので手伝ってきた被災者)には、家も仕事も奪われた地元の若者たちがいた。避難所で自由に身体を動かせるのは若者になる。だが当然、疲労も溜まっている。震災後二カ月が経ち、そろそろ仕事を見つけて生活をしていかなければならない。そこに県外からのボランティアが大量に来れば、これを機に避難所を出ようと思う。非常時の緊張も弛緩する。だが連休が終わり家も本業もあるボランティアは被災地を去る。慢性的な被災者支援を肝に銘じなければならないだろう。 (平井康嗣)