「どんな壊れた時計でも一日に二回は正しい時刻を指す」
2011年11月4日9:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
「どんな壊れた時計でも一日に二回は正しい時刻を指す」
ニヒリストとも言われた作家マーク・トゥェインの有名な格言である。
三月一一日から八カ月あまりの時が過ぎようとしている。
時が経てば、三月一一日当初に湧き出た想いや決断や記憶も揺らぎ、薄らいでいくだろう。
忘却曲線はおもいのほか急である。
そんな今、壊れていないと信じていた日本社会という時計の針が、ふたたび正しい時刻を指し示す。
あなただけにとって。ようやく。
そのときに、あなたは時計は壊れていなかったと信じ、もとの日本社会に戻ろうとするかもしれない。
その時にいまいちど立ち止まって思い出してほしい。時計は壊れていたのでは、と。
今週号は震災後の日本に向き合いながら、希望を持って生きているという人たちを特集した。
大事故を起こした原発、その背景にある日本社会をできるだけ見ないようにしながら希望や夢を語る人もいる。
彼女ら彼らはそうではなくて、自覚的に何かを見ようと、今、もがきながら生きている人たちである。
(平井康嗣)