編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

芥川賞とやらが発表された

 芥川賞とやらが発表され、石原慎太郎都知事をおじいちゃん呼ばわりして痛快な田中慎弥氏が、日頃、権力者に臆病なメディアの代弁者として機能したために繰り返し報道されていたが、もう一人の円城塔氏の発言にも共感を抱いた。

 先週土曜日の情報番組内で、カネがなくて本が買えないから自分で書いてしまったと小説を書いた動機を語っていたことだ。
 それで書けるところが才能なのだろうけど。

 翌日曜日には、タレントの千秋が語る番組があり、おもちゃを買わない主義なので、子どもがバッグから、たまごっちから紙で自作して遊ぶと話しており、(実家が金持ちだし)楽しげだった。
 私は生家を見に奈良まで行くほど工芸家の富本憲吉が好きで、富本が襖の引き手まで陶器で作っていたことが印象に残っている。

 料理や日曜大工に留まらず自分で作れるものは自分でも作る、そんな自由さが好きだし大切だと思うが日本では不足気味か。
 小学校時代、ルービックキューブを、紙でつくった山下くんはいま何をしているのだろう。

(平井康嗣)

子どもの生きづらさや育てにくさを実感したので民主党が子ども手当や高校無償化を掲げ、労働者派遣法改正に取り組もうとしたことに希望を感じた

 子どもの生きづらさや育てにくさを実感したので民主党が子ども手当や高校無償化を掲げ、労働者派遣法改正に取り組もうとしたことに希望を感じた。
 同じような考えをもった人は多いだろう。予算も捻出できるとかつて野田首相は言った。
 今や予算は捻出できないということになっているが、本誌はしつこく希望を追求し続ける。
 しかしながら民主党は、新自由主義に突き進んできた自民党などの攻撃により、改革の旗を次々に降ろしてきてしまっている。

 この勢いだと消費税増税案を国会で通すために、公約違反を謝罪して解散しかねない。
 この挙げ句、子どもの生きづらさに抜け道がなくなる。
 野田首相の自民党コンプレックスかもしれないが、自民党ができなかったことをやろうとしているだけにしか見えなくなってきた。
 岡田副総理の “身を切る” も気にかかる。国会議員や官僚が多い大きな政府では利権や無駄が生じるという民主主義への不信が根底に根ざす。
 その不信感ゆえの「小さな政府論」だという点を押さえておきたい。

年末から消費税政局がメディアを騒がせている

 年末から消費税政局がメディアを騒がせている。
 消費税増税は視聴者の暮らしに直結するし、政局混乱は必至の主題。
 数字を稼ぎたいメディアが好むテーマなのだろう。
 
 先日、消費税導入に関わったという財務官僚の講義を聴いた。
 消費税導入について最後まで(主婦である)妻だけは説得できなかったという。
 つまり、消費税の肝は「説得」ではなく「断行」するか否かなのである。
 増税策で票をとることは今の日本ではきわめて困難である。
 そうなると妙な美学を抱える政治家ほど強行してしまうのだろう。

 消費税論議では年金や医療費など社会保障を削る話ばかりが出ているが、
少子化対策を真剣に施策しなければ、二〇年後、三〇年後の日本を支えることはできない。
 しかし政府への不信、暮らしへの不安がある。
 結婚もできず、子どももつくれない。
 独居老人も地域が支えられず病院漬けになる悪循環。
 今の日本社会に温かい血が通っているとはなかなか思えない。

 国民が何を政権交代に期待したのか、今一度考えたい。

(平井康嗣)