編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

原発震災から一年の福島を訪れて澱のように溜まった言葉がある。

編集長後記

 原発震災から一年の福島を訪れて澱のように溜まった言葉がある。

「分断」である。「福島を分断しないでほしい」という訴えをたびたび耳にした。避難する人、避難した人、避難しない人。被曝を見ようとする人、見ないようにする人。津波被害を受けた被災地とは違う、原発と放射能という存在が人の暮らしを今も縛りつけている。

「分断」という言葉は、数年前に普天間飛行場の代替施設問題で名護市を取材していたときにも痛々しく耳にした。原発と米軍基地は似て非なるものと踏まえてはいるが、今、原発をめぐっても住民投票運動が熱心になされており、名護市では基地受け入れについて一九九七年に市民投票を実施した。建設反対過半数の民意が示された。これで飛行場誘致について分断が解消されるかと思えた。その結果どうなったか。建設派の比嘉鉄也市長は辞任し、市長選が実施された。今度は建設派市長が誕生したのである。

 どちらも「民意」の反映だろう。民主主義は「分断」を解消しえるのだろうか。 (平井康嗣)