編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

 あなたと友人は腹が減り、食堂に行く。

 あなたと友人は腹が減り、食堂に行く。
 ビルマの地方都市だとする。メニューはビルマ文字。判断不可能だ。
 でもあなたは選ぶ。決断だ……。では。なんとか内容がわかったとしよう。
 が、カレーライスとライスカレーの二種類だけ。どっちでもいい……。けれど選択しなければならない。
 迷う。すると友人が大胆に選んでくれた。その判断は合理的なものではない。

 サイを振るような暴力的な決断だ。選んだ料理も不味かった。でも彼にどこかで一目置いた。
「決断の瞬間はある種の狂気である」。キルケゴールはそう達観したという。

 昼飯程度の「決断」はいい。しかし人の暮らしに関わる政治の場合は?
 今の日本は成熟している。甲乙つかない問題は多い。
 憲法改正など遠い世界の話だ。長い目でみれば大きく影響するが迷って当然だ。
 その中で次々に大胆に攻撃的に決断する。すると改革者という印象を獲得し信者が増える。

 これを逆手にとる政治屋が今の日本にはいる。「決断」を見せびらかす者に気をつけたい。

(平井康嗣)