編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

日韓関係の底が抜けることはまず考えられない。問題は対朝鮮だ。

 日本政府は日米韓を安保条約で意識せざるをえないため、日韓関係の底が抜けることはまず考えられない。問題は対朝鮮だ。政権交代した朴槿恵大統領に注目したい。

 朴槿恵を政治家として注目したのは、『横道世之介』のモデルとなった韓国人留学生の人命救助事故について来日時に言及した時だ。再び注目したのは韓国でのハンセン病に関して。在日コリアンの回復者、故・国本衛が自著の韓国語版出版記念会に出席するために“帰国”した際、同伴取材した。五〇〇人集まった会に朴も出席していたのだ。一方、国本と六八年ぶりに空港で再会した弟は日本語が通ぜず会には参加せずに帰った。

 韓国では日本よりも差別が厳しい。だが社会復帰して実業家になる人は少なくないという。ある回復者も養鶏業者になったが、卵は差別的に敬遠された。それを軍隊に引き取らせ事業を軌道に乗せたのは朴だったと、ハンセン病克服の寄付では世界一という笹川陽平から先日聞いた。単純化して見ては人も国もわかり得ない。

(平井康嗣)

東京で五輪誘致を画策していると最初に公にしたのはおそらく私だ。

編集長後記

 自慢めいた話をすると、東京で五輪誘致を画策していると最初に公にしたのはおそらく私だ。二〇〇五年三月に電通作成の文書を入手し、<明治神宮「神社本庁離脱」の陰で「電通」が作成した「外苑再開発計画」> という記事を書いた。明治神宮総代の石原都知事・ゼネコン・電通らが東京五輪と防災を名目に資産価値約一兆円と言われる東京・明治神宮外苑の再開発を目論んでいるという内容だ。石原氏得意の再開発利権である。しかし外苑は「天皇陛下のために」と民間有志から寄付された不可触の聖地。おいそれと売却できない。だから大義名分が必要なのだが、それに五輪は値するのか。原発事故で汚染され、人種差別的な知事のいる東京を海外が敬遠するのは当然だ。空想が仕事である小説家ではなくジャーナリストだった知事が、東京都の一連の不正に目をつぶってきたことは卑怯である。自分の立身出世のため、目の前の不正は見過ごして棚ボタを祈るというイノセ的な人間が今の東京、いや日本を支えているのだろうか。 (平井康嗣)

これから四年は自公政権が続く

 これから四年は自公政権が続く。あの安倍政権だ。
 二〇〇六年発足の第一次安倍政権は教育基本法を改定し、憲法改正国民投票法を成立させ、朝鮮への態度を強硬化させた。
 在日韓国人の多い山口県下関を地盤とし日韓関係を重視する首相は、それゆえか在日朝鮮人に異常に不寛容である。

 自由(主義、リベラリズム)を党名に掲げる自民党は本来、リベラルのはずだ。
 しかし同党憲法改正案を見ると今やこの思想と相反する。
 総選挙後永田町ではリベラルの影が薄くなった。
 言葉の意味は変わるものだが、私は個人を大切にするリベラル思想の真髄は「寛容さ」だと理解している。
 これは政治や経済において必須の気持ちのはずだ。

 さて一九九三年一一月に創刊した本誌はおかげさまで今年二〇年を迎えます。
 本誌がなんとか生き延びていられるのも、エンターテインメントや宣伝記事よりも社会に杭を打つ硬派な記事を載せる雑誌が日本に必要であると思われ続けているおかげなのでしょう。
 期待に応えられるよう、励みます。