日本のものづくりを小粒にした要因の一つに、株式市場があるだろう
2013年4月12日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
編集長後記
日本のものづくりを小粒にした要因の一つに、株式市場があるだろう。一年に四回決算し、そのたびに競って成績発表をする。
一年を通じ、季節に左右され、不安定な今の農業はそんな市場の理屈が当てはまるのか。以前、葡萄南限の宮崎県都農町を取材した際、土を改良し、樹を変えていくのに、「あと一〇〇年かかるかな」「だな」と農家の人々があっさりと話していた姿に内心、衝撃を覚えた。時間軸が違いすぎる。かりに農業を株式会社にしても株式上場化など、まともな姿ではできないだろう。
また上場会社は日本のさまざまなくだらない法律も遵守することが求められる。『電通の正体』で取材した当時、広告最大手・電通のベテラン社員は「上場してから会社がつまらなくなった」と話した。理由は時間をかけた仕込みが決算や法令遵守があるためにできなくなったからだという。「以前は何をしているのかわからない社員がいた。そいつが大きな仕事をしたりした」と。私も生涯をかけ、大粒の果実を実らせたいものだ。 (平井康嗣)