『点と線』という小説があった…
2013年6月14日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
編集長後記
『点と線』という小説があったが、「慰安婦論争」などが典型的だけど最近の議論や関心のうごきをみていると、点(瞬間)だけに終始している。面(ひろがり)すらなく、しかも線(過去)の視点もない。瞬間的にインパクトのある膨大な情報に右往左往している。だからネット上に「キュレーター」なんてのも現れているが、今後はネットに紐づけできない「線」の情報をいかに伝えるかが問われるはずだ。
憲法改定議論も現実味を増し、自民党が九六条改定を前面に掲げたことは、これまでになく憲法議論を豊かにしたと思う。多数決の横暴を防いで憲法の理念を護る規定を変えようと主張するのは、なんとわかりやすい多数決の暴力性だ。九条護憲論はスローガン化し思考停止になりがちだったが、今回は国家と国民という存在を振り返るきっかけとなった。理解すれば変えられない「法」が何か益々わかるはずだ。
さて今週号の久野収特集は、日本の戦後民主主義と言論(の一端)を具体的に振り返る「線」になりえたと願いたい。 (平井康嗣)