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安保法制懇の座長である柳井俊二元駐米大使が、集団的自衛権の解釈変更を示唆した

編集長後記

〈4日のNHK番組で「今までの政府見解は狭すぎて、憲法が禁止していないことまで自制している」と指摘。「集団的自衛権の行使は憲法上許されている。国連の集団安全保障への参加は日本の責務だ」と述べた。〉(八月五日『朝日新聞』デジタル版)

 安保法制懇の座長である柳井俊二元駐米大使が、集団的自衛権の解釈変更を示唆したが、この引用された柳井氏の発言は手前勝手すぎないか。
「集団的自衛権は、憲章五三条による拘束を受けずに、地域的取極にもとづく相互援助義務を発動することをめざしてもちだされたもの」(田畑茂二郎『国際法新講・下』)だ。

 常任理事国(英米仏中露)が攻撃国である場合、国連の集団安全保障が拒否権により発動できなくなる。この国連加盟国内の「ねじれ」を脱するために国連憲章に事前に仕込まれたのが集団的自衛権という妥協の産物であり、憲章や憲法を骨抜きにする概念である。国際人権後進国として悪名高い日本政府が都合良く国連憲章を持ち出さないでもらいたいものだ。 (平井康嗣)