編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ドイツ系ユダヤ人哲学者、ハンナ・アーレントの自伝映画が好評らしい

編集長後記

 ドイツ系ユダヤ人哲学者、ハンナ・アーレントの自伝映画が好評らしい。私も試写を観て映画評だけでなく、アーレントを読み解く論文を八柏龍紀さんに寄稿していただいた(一一月一日号掲載)。

 秘密保護法の連日の抗議運動に参加しているとき、アーレントを振り返っていた。孤高になっても、己の思考に誠実である彼女の姿勢についてだ。アーレントはイデオロギー(絶対または普遍な考え、思想)や連帯とは一定の距離を置いている。他者との最大公約数的な思想やイデオロギーを見つけ出してつながろうとする人々は多いが、真摯な事実追究や論理性を棚上げするとその関係も脆いものだ。

 鎌倉孝夫さんと佐藤優さんの師弟対談『はじめてのマルクス』(小社刊)が、書店で健闘している。鎌倉さんは高校生の佐藤さんに割り勘は資本主義のイデオロギーだと諭したそうだ。鎌倉さんはそのことは覚えていなかったが。マルクス主義経済学ではなく、マルクス経済学を読み解くことでつながる両者には「知」の厳しさを見た。 (平井康嗣)