昨日の光景が頭を離れない。
2014年5月30日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|平井 康嗣
編集長後記
昨日の光景が頭を離れない。天気のいい首都圏、緑に囲まれ遊具も多く、親子が多く集まる運動公園でのことだ。
ビタン! と土にはげしく転ぶような音がした。振り返ると、10メートル先くらいに4歳くらいの子どもが倒れて、甲高く泣き叫びはじめた。近くに父らしき男が険しい顔で立っている。あたりを見回してぎょっとした。成り行きをみていたらしい女性が口を両手で抑えて目を丸くし、周囲の100人ちかい大人たちも凝視している。親子へと振り返ると、父は犬か米袋のように片手で子を脇に抱え人気のない場所まで歩き、やはり子を地面に投げつけた。子はもっと泣いた。えっ、まずくない? そんな空気が広場に広がるのがわかった。結局、母親らしき女がおいつき、「家族」は消えた。その後も場は硬直し続けていた。
結局、誰も仲裁に入れなかった。私も動けなかった言い訳を考えていた。おせっかい、だけど、真っ当な大人はいなかった――。そんなメッセージを私たちも、おそらくその母子も受け取っただろう。 (平井康嗣)