編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

フランス同時テロ

 10月9日号の書評で石井千湖さんが紹介したことで知ったミシェル・ウエルベックの『服従』を読んでいた折り、11月13日にフランスで同時テロが起きた。

『服従』では極右政党に対抗するため社会党とイスラム政党が手を組み、イスラム政権が誕生する。政権は国民を豊かにする一方で個人主義や自由という近代フランスいやヨーロッパ的イデオロギーを脱臼していく。ノンポリの主人公の視点で物語られる近未来小説だ。

 今回犯行声明を出したIS(イスラム国)とイスラム社会の間には線を引き整理する必要があるが、そう捉えない人も多いだろう。結果、現実世界においては小説とは真逆にイスラムや難民流入に対抗するために排外的な極右政党が反動的に支持を集める可能性が高まったのではないか。

 日本は大量破壊兵器がないにも拘らず政治的な直感のみでイラク攻撃に加担した。その罪を不問にするためにも、自公政権は軍事協力外交を進めるだろう。もはや、ノンポリこそ考えなければいけない時代になっている。