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3万円の価値

 安倍政権は日本の中にある「貧困」を見えなくしようとしている。解決しようとしているという意味ではない。「貧困」はリアルなものではないと短期間だけ錯覚させようとしているだけだ。

 政権は今後も医療費や年金を削り、介護保険を締め付けていくだろう。にもかかわらず、4月以降に3万円の臨時給付金を低所得年金受給者に配って恩を着せようとしている。

 その最大の動機が7月の参議院議員選挙で自公政権が票を買うためだ。誰でも理解し怒りを持ちうる見え透いた話だが、メディアはこれを理解させるように伝えてはいない。民主党もかつてばらまいたと自民党はよく批判するが、もっと理屈が立っていた。非正規労働、教育費など「貧困」を政権交代前にテーブルに上げて問いかけた。

 貧困への怒りや危機感が有権者に伝わったことが政権交代の大きな原動力だった。その一方で今回、甘利TPP大臣や秘書が挨拶代わりに数十万円を「ごっつぁん」している。ザ・自民党。彼らに3万円の価値を聞いてみたいものだ。