喜べるか
2016年3月25日7:00AM|カテゴリー:編集長後記|admin
映画『マネー・ショート』はサブプライム(住宅)ローンの毒債権ぶりをいち早く見抜き、空売り(ショート)に大博打を張る投資家のスリリングな物語だ。当初彼らの分析は笑い飛ばされ、ウォール街も隠ぺいし、マスコミも事実の告発を恐れる。次第に彼らは不安に駆られていくが、最後には何百億円と大儲けをする。
だが資本主義は自浄せず、金融トップも責任をとらない。これらは歴史的事実だ。かつての日本の不良債権発覚と銀行の責任問題、そして今の東京電力福島原発事件と相似形である。大きすぎて潰せないものは潰れないのである。
唸ったのは、告発を理解する一方で資本主義の破綻が引き起こす犠牲への覚悟をブラピが若い投資家に問う場面だ。日本でも原発がなくなれば住民の暮らしが破綻するという理屈がある。それを呑み込んでの告発ができるかだ。映画でももっともリスクを負い勝った連中は素直に喜ばない。
パフォーマンスがアートだなどと喝采をあびても、バンクシーは心から喜んではいないのかも。