編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

日本会議と自民党

 戦後価値観への怨念を露わにした日本会議の源流の一つは、左翼に反発した「全国学生自治連絡協議会」だという。

 右派の学生運動は戦後史であまり注目されてこなかった。強いて象徴的な存在は三島由紀夫の楯の会だろうが、当時は武闘派学生から批判もあったという。

 さて本誌2015年2月20日号の特集「劣化する自民党」内でも紹介した中丸到生・元自民党政調会長室室長は東海大学が出版した記録「自民党元職員の回想録」の口述者だが、「回想録」には左翼学生運動への危機感に対する動きは早稲田大学から広まり日本学生同盟が結成されたことが記されている。同盟には森喜朗、小渕恵三、海部俊樹らOB政治家が「物心両面の応援、支援」をしたそうだ。

 一方、中丸氏も中央大学に自由主義研究会をつくる。在野の軸として、生長の家を出自とする冒頭の全国学生協議会が、地方ブロックごとにできていった。いずれにせよ劣化する自民を日本会議が支え、いまや復古的イデオロギーにまみれた日本社会を招いているのだ。

パナマ文書

 パナマ文書といえば、オフショア市場、タックスヘイブン(租税回避地)である。そこでは租税が回避されるが、メディアも回避される。

 ITバブルの2000年初頭に外資系金融機関が日本に押し寄せ日本の不動産などを買いあさったが、彼らは取材拒否のうえ、ペーパーカンパニーをバミューダ諸島につくり、取材がまったくできなかった。しかし経済のグローバル化に遅れつつも、メディアもグローバル化してつながったので今回の一件は表沙汰になったといえる。

 租税回避でいえば、ゴルゴ13も口座があるという? スイスのプライベートバンクが有名だ。スイスの国旗は赤十字を赤白反転させたようだったので、スイスの銀行は「病気にかかったお金を治すところ」とも言われたそうだ。

 結局、国際金融統計もなく巨額の租税回避マネーは不明だ。米国政府もお手上げで、法人税減税など企業に対する優遇策を導入したという。日本も企業の顔色をうかがうくせに国民には愛国心教育を強化しようとする。これは誤魔化しである。

「なめんなよ」の精神

 関東では『東京新聞』が、「リベラル」の印象が強いが、隣県の『神奈川新聞』が5月3日の憲法記念日に〈萎縮しない〉、〈「なめんなよ」の精神を〉という全面広告を出して話題になった。広告は当日のデモに使えるプラカードのデザインだった。

 さて『週刊金曜日』、というか私もいつも〈なめるなよ、上等じゃねえか〉の精神ではあるけれど、よそから言葉を出されると、ああそうだなあと感心する。届く半歩先の言葉とはそういうものか。

 同紙は安倍政権の要である菅義偉官房長官の地元。横浜にはカジノ誘致の話もある。萎縮の根源に対する調査報道も期待したい。

 この広告についてネットで解説していた同紙の石橋学記者には『朝日』バッシングが吹き荒れた2014年10月に小誌に寄稿してもらっている。趣旨はやはり「萎縮」しない新聞現場からの声。見開きには『西日本新聞』の宮崎昌治記者も寄稿。気骨があって明るい二人である。『西日本』の記者は九州の大地震で消耗しているだろうが、彼らならきっと乗り越えるだろう。