編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

時代は変わる

 「世界は動いている」「時代は変わる」ことを実感した。韓国の金淇春(キム・ギチュン)元大統領秘書室長が逮捕されたからだ。朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人による国政介入問題に連なり出てきた、“政権に批判的な文化人リスト”の作成に絡んだ職権乱用の容疑だ。

 元室長は、朴正煕(パク・チョンヒ)政権下で維新憲法草案づくりに参画し、その後法務部長官まで務めた人物である。その彼を、娘の朴槿恵大統領は「新維新体制」づくりに重用した。

 金元重(キム・ウォンジュン)千葉商科大学教授は本誌(2015年12月25日号)で彼を「拷問、不法連行、長期拘禁による虚偽自白で多くのスパイでっち上げを指揮してきた」と批判し、そういう人物が大統領に次ぐ位置にあったことを指弾した。元室長は、金教授を含む在日の留学生がスパイ容疑で韓国で一斉に逮捕された1975年の「11・22事件」(再審で無罪判決)の責任者でもあったのだ。

 翻って日本はどうだ。「敗戦」を受け止められず、高度経済成長の成功体験にしがみつく安倍首相が「国創り」を宣言する。時間が止まっていはしまいか。

トランプ大統領と情報合戦

 頭の中が混乱してきた。トランプ大統領の就任式が近づいてくるにしたがって、情報合戦が激しくなり、何がウソで何が本当なのかわからなくなったからだ。国内メディアの情報をみてもだめ、海外メディアの情報をみると……よけいわからなくなる。

 今週号のトランプ関係の記事を読んで、ようやく腑に落ちた。読者の皆さんはいかがでしょう。

 俳優のメリル・ストリープが的確なトランプ大統領批判をしているのをみると、快哉を叫びたくなる。障がいのある記者のまねをして嘲るなんて、本当に信じがたい。

 だが、日本のトップがどうかというと、別の問題がおおありだ。遂にアベノミクスの理論的支柱である浜田宏一氏が白旗をあげたというニュースが国内を走ったのが昨年11月のこと。内閣支持率が大きく落ちるぞ、と密かに喜んだが、多少沈んで浮かんで、1月のNHKの調査では「支持する」が55%(フー!)。

 小者でも(!)しぶとい。粘り強くいくしかないですね。

沖縄差別

 昨年末から沖縄をめぐり慌ただしい動きがあった。最高裁敗訴を受けて辺野古埋め立て承認の取り消し処分を翁長雄志沖縄県知事が取り下げ、政府は辺野古工事を再開。墜落事故で中止されていたオスプレイが飛行再開し、件の空中給油訓練も再開へ。そこに「ニュース女子」の歪曲報道。

 だが、基地建設の抗議行動の関連で昨年10月から名護署に勾留中の山城博治沖縄平和運動センター議長をめぐっては、釈放の兆しがない。拒否されていた靴下の差し入れが認められただけ(1月10日現在)。

『沖縄タイムス』によると、大病を患った山城氏の健康を気遣う支援者から申し出があったが、「自殺予防」で拒否されていた。靴下は交渉の末、3種類の中から短いものだけが(!)認められたという。山城氏の処遇については海外の識者10人が「不当で、理不尽」と批判をしている。国内では元裁判官らが、長期勾留の違法性を指摘し、街頭署名を集めて裁判所に保釈請求をする予定だ。

 今年も本誌は沖縄差別問題を追っていく。