編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

労働3権

「労働3権が憲法に定められているような国はほかにない」と今週号で水谷研次さんが言及しているが、そのことをうらやましく感じたことがある。駐日某大使館で働いていたときのことだ。休日を減らされたり、労働時間が延ばされるなど労働条件がいきなり下げられても文句がいえない。今から思えば何らかの手立てがあったのかもしれないが、結局不満を抱えたままみんな辞めていった。

 雨宮処凛編集委員の『一億総貧困時代』(集英社インターナショナル)を最近読んだが、あのときの私と同じ治外法権下? としか思えないような実態が取り上げられていて驚いた。労働問題に対する引越社のこじらせ具合ははんぱじゃない。働きやすい職場をつくろうなんて意識は会社にみじんも感じられない。社員は結局、ユニオンの協力を得て裁判で闘うことになる。

 私の場合は同じ職種の4人全員で意見のすりあわせをして大使に談判することに。当日は1人脱落、でも幸運にも要求は聞き入れられた。

日米首脳会談

 ここのところ、日米首脳会談の話題で少し食傷気味。「リラックスした雰囲気の中で、地域情勢や世界の課題について、突っ込んだ意見交換を行うことができました」(首相官邸のフェイスブックより)。

 個人的な信頼関係を築くのは勝手だが、入国禁止の大統領令をめぐって、「内政問題」を口実に”だんまり”というのは、ちょっと情けない。安倍首相の国際社会をめぐる根本的な認識が問われているわけだから、せめてもうちょっとましな対応はできなかったのだろうか。国際社会を敵に回してどうする?

 米国のお隣のカナダでは、入国禁止令が出た翌日に、トルドー首相が難民歓迎のアピールをツイッターに投稿したことが話題になっていた。

 大統領令が法廷闘争になったことで、トランプ大統領は新大統領令を検討しているという。もしかして、「(人権無視で悪名高い)日本の入管政策をモデルに検討している」と大統領に賞賛されていたりして……。安倍さん、国内の問題で”だんまり”は許されませんよ。

オスプレイ

 漂着したオスプレイの飛行マニュアルをめぐる新藤健一さん執筆の2回にわたる記事を、これで無事にお届けできることになった。

 私自身、この記事でいろんなことに合点がいった。乗組員に課せられた水中での脱出訓練のビデオもユーチューブで見た。機内に水が入り込んでくるときの緊張感は見ていても伝わる。脱出訓練は十分な明るさが確保されているが、漆黒の闇のなかだったらどうだろう。

 これほど過酷な任務を乗組員に課すオスプレイが国内を飛び回ることに、あらためて恐怖を覚える。それだけではない。これらを総動員した演習が日本国内で展開されていても、それを私たちが知らないことに愕然とする。

 先日の大学入試センター試験の英語リスニング時、会場の一つ琉球大学付近をオスプレイを含む米軍ヘリが飛行したという。騒音レベルは地下鉄の車内レベル以上とか。

 今月16日19時から、東京・神保町の「ブックカフェ二十世紀」で新藤さんによる緊急報告会が開かれる。興味のある方は是非!

「見せしめ」という「裁量」

 親の経済力が乏しいと、子どもの進路は大きく影響を受ける。親のほうは子どもの教育費用次第で老後の蓄え(設計)が大きく変わる。教育費は、親子の自律した関係をゆがめる日本の社会制度上の大きな問題ではないのか(そう考えるのは、私がダブル受験生を抱える親だから?!)。

 小池百合子都知事は「教育の機会均等」の名目で、年収760万円未満の世帯の、私立高校授業料の実質無償化の方針を公表した。思想信条を超えて、百合子さんガンバレ、と言ってしまいそうになるが、冷静に考えると都知事のむごさが身にしみる。都知事は一方で朝鮮学校への補助金の支給停止を続けているからだ。結果として「差別」を強めているのだ。

 1月28日、大阪の朝鮮学校が補助金不支給の決定取り消しを求めて大阪府・市を訴えた裁判で、大阪地裁は朝鮮学校の請求を斥ける判決を下した。拉致問題の解決と朝鮮学校の子どもらの教育を受ける権利は、まったく関係がない。「見せしめ」という「裁量」を許していいのか。