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戦争への“感度”

 ここまでとは……。自衛隊が米軍とともに国内外でここまで大展開をしていたことにいまさならがら驚く。これまで知らなかった、知ろうとしなかったことが恥ずかしい。

 今年92歳になった父親は敗戦まぎわに徴兵された。“海軍精神注入棒”とやらでお尻を叩かれた経験を子どもの頃聞かされた記憶がある。20歳そこそこの若者にとり、軍隊は特別な場だっただろう。

 仕事仲間に誘って貰って父とほぼ同じ年代の方と山に登ったことがある。夜中に大きな声をあげるかもしれないと事前に言われたけれど、真っ暗闇のなか、その方が大声で軍歌を歌い出したのには驚いた。軍隊で非常に危険な任務につかれていたという。だいぶ前に亡くなられたが。

 父親は最近、自分が行ったのは陸軍だと言い張る。「海軍さんが陸に登っちゃった」と母親は苦笑する。戦争が身体に刻まれた世代は少なくなり、戦争の記憶は薄れるばかり。だが、戦争への“感度”を、私たちが持ち続けることは可能だ。その愚かさを聞いた者として。