編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

不正義に怒る

「街宣車まで持っている市民団体なんて珍しいなと、少々普通じゃない」

 在職最長記録を更新中の麻生太郎財務大臣のことばに唖然とした。16日、財務省前で開かれた「モリ・カケ追及」緊急デモをめぐる国会での答弁だ。確定申告も始まったこの忙しい時期に、1100人もの人たちがどうして集まらなければいけなかったのか、麻生大臣は思いをいたすこともないらしい。もちろん「立憲民主党の指導」でもない。

 公平・公正であるべき佐川国税長官をはじめとする役人らに嫌疑がかかっていることを、大臣はご存じないのか。彼らは逃げて隠れて説明責任を果たさないではないか。詳細は『週刊金曜日』今週号14~15ページを読んでほしい。

 公的な場での発言だから、撤回・謝罪をしてほしい。昨年の都議会選挙最終日に、安倍晋三首相が秋葉原で「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言ったことをついつい思い出してしまう。エライ政治家にとって、不正義に怒る市民は普通じゃないらしい。

石牟礼道子さん

 石牟礼道子さんの訃報が入った。石牟礼さんは小誌立ち上げ時の5人の編集委員のおひとりだ。その後も小説「天湖」の連載、インタビュー記事などで登場いただいた。

 今週号では落合恵子、田中優子、両編集委員と鎌田慧さんが追悼原稿を書いてくださった。いずれ特集記事を組めればと思う。

 創刊当初の記事では故住井すゑさんとの「作品空間」を踏まえた対談、染織家の志村ふくみさんとの「染」をめぐる対談などが印象深かった。今秋上演予定の石牟礼さんの新作能「沖宮」では、志村さんが衣装を監修されると聞いた。

 小誌では昨年3月17日号で石牟礼さんのインタビュー記事を掲載している。死者と共同体とのつながりという話のなか、かつての水俣での送りについて言及されている。「亡くなった人の魂と共同体の魂がつながっている」から、「お悔やみ申し上げる」というのは「ちょっと違う」。「亡骸を振り返りながら、次の一歩を踏み出す」と語られた。

 いま、そのことばを噛みしめる。

闘い

 残念な結果であることは間違いない。ただこれですべてが終わるわけではない。名護市長選挙のことだ。

 マナティが大好きで、見たことがないジュゴンもきっとマナティのように愛すべき動物と思い込んでいるわが家の高校生は選挙結果を聞き、わっと泣き出した。「沖縄からジュゴンがいなくなってしまう」

 あらら、いつも憎まれ口をきいているのに。東京の高校生にはそんなひっかかりしかないのも事実。いつまでなら間に合うのかわからない。でもきっとまだ間に合う。

 今回の結果を聞いたら悲しむだろう人の顔が思い浮かんだ。舛田妙子さん、本誌の音訳サービスを手がけてくれた方だ。昨年11月に亡くなられた。その夕方、メモリートーキングという集まりがあり、活動を支えてくれた方々を中心に50人ほどで思い出を語り合ったところだった。舛田さんはいつも沖縄のことを気にかけていらした。

「民意」――それは重い事実だ。しかし闘いは続いている。本誌はそこから目を逸らすつもりはない。

拍手

 金棒を持つ赤鬼2匹の人形が寒風に揺れる。1月28日、新宿駅前。生活保護費引き下げに反対する「もやい」&「エキタス」の街宣に参加した。

 生活保護を受けている方がスピーチをされた。切り詰めて生活されていること、周りから尊厳を踏みにじるような苛烈な批判を受けたこと、その人たちもぎりぎりのところで悲鳴をあげているように思えること……。

 今回、生活保護費の切り下げが出てきたのは、「一般低所得世帯」の消費実態が冷え込んでいるからだ。それってアベノミクスが失敗したってことじゃない? 国会議員3人も登壇。長妻昭さん(立民)によると、引き下げに連動する制度は38以上という。沖縄での相次ぐヘリ事故で「それで何人死んだんだ」発言があったが、生活保護の引き下げでも自民は同じことを言うのかと皮肉った小池晃さん(共産)、鋭い!「そもそも人を使い潰す働き方を加速したのは今の政治」と山本太郎さん(自由)、その通り! 気がつくとかじかんだ手で一生懸命拍手していた。