編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

真っ当な話を聞く知恵と努力

 リニア中央新幹線について話を聞かせてくれたり、議員立法に詳しい議員を紹介してくれた自民党議員はいま、取材に応じる気配がない。党の役職に就いたからか? この間、編集部として与党議員にさまざまなアプローチをしてきたが、全体として以前よりも応じて貰うのが難しくなっているように感ずる。

 右旋回が強くなったこと、リスクを承知して、自由な言論の場に出ていくことを意気に感ずる議員が減っていることもあるのだろうか。今回の自民党の総裁選で、石破茂議員が「正直、公正」をキャッチレフレーズから外した。どれだけ窮屈な党なのだろうと呆れてしまう。

 もちろん7月27日号の衛藤征士郎議員のように、思想としてはまったく対立するばりばりの自民党議員に登場いただき、まっとうな話が聞けることもまれにはある。ちょっとした感動を覚えたもんなあ。それを考えると、適当な相手を探し、交渉してOKをとるこちらの知恵や努力が不足していると反省するしかない。

(編注)石破氏は8月27日、党総裁選に向けたキャッチフレーズ「正直、公正、石破茂」を変えない考えを表明した。

権力とメディア

「国民の敵」としてメディア批判をしてきたトランプ大統領に、米国のメディア300社以上が「報道の自由」を訴える社説などを一斉に発表し、応戦した。

 一方、韓国では、メディアを支配下に置こうとする過去の政権とメディアの激烈な闘いが知られている。

 先週末、朴槿恵大統領を弾劾に導いたろうそく集会などを牽引してきたキム・オジュン氏が、自身の制作した映画の上映会のために来日した。会場のトークで、いかに多方面からの妨害工作と闘ってきたかに言及した。

 たとえば撮影機材の破壊。何者かがパソコンのCPUのピンを折るという事態も周辺で起きたという。同氏らがとった対抗手段は知恵と根性のたまものとしかいいようがない。1万6000人の市民のクラウドファンディングに拠っているという事実が、彼らを強くさせるのだろう。

「風速計」で佐高信編集委員が本誌への危機感を表明された。権力をも批判する本誌の編集責任者の資格がお前にあるのかという問い、虚心坦懐に受けとめたい。

144国中、日本は114位

 ニュージーランドでは首相が6週間の出産休暇があけて公務に復帰した。パートナーが育児に専念するという。かたや日本では、女性の医学生・医師の数を抑えるよう、医学部入試で点数操作が行なわれていたことがわかった。

 東京医大の女子受験者に対する一律減点操作の記事には目を疑った。いい悪いはともかく大学入試は点数だけが支配する世界と思ってきたからだ。

 このニュースに北原みのりさんが同大学の前で抗議のデモを呼びかけ、多くの女性たちが声をあげた。ジェンダー・ギャップ指数が144国中114位という悲しい状況は、こういうところで着実に作られてきたのだと呆れながら合点した。その後、3浪、4浪以上の受験生もそれぞれ減点されていたことがわかった。どういう価値観か?

 医師の働く職場の劣悪さが問題になって久しいが、女性医師がもっと増えていたら、働き方改革はおのずと進んでいたに違いない。翻って自分たちの職場では……。それぞれの業界での問い直しが始まっている。

2年後の東京五輪

 サッカーの試合が7月22日に始まり24日に開会式、8月9日が閉会式。2年後の東京五輪のことだ。殺人的な暑さの東京に選手や観客をお招きするのは忍びない。だが、住んでる私たちもたいへんだ。

 N県に住む鍼灸師の友だちは、国際総合大会ドーピング・コントロール・オフィサーに向けて研修をうけているという。もちろん東京五輪を前提にしてだ。半年前には東京マラソンに新幹線で駆け付け、日比谷公園で鍼のケアボランティアとして参加していた。「トップランナーに混じる車椅子ランナーに声をからして応援し」、仕事の前に力尽きたと苦笑していた。3・11の時も避難者に鍼灸のボランティアをしていた。 

 一方、東京五輪はボランティアの待遇の悪さが問題になっている。儲けるところは儲けて、ボランティアには経費も渡さない。開閉会式のチケット最高額が30万円というのは相場なの? 一体だれの懐に入るのだろう。残った赤字はわれわれ都民でシェア? それだけは勘弁願いたい!